リスキリングとは、最新のビジネス環境や技術の変化に適応するために、既存の従業員が新しいスキルや知識を習得するプロセスです。この記事ではデジタルトランスフォーメーション(DX)時代に、絶えず進化するテクノロジーやビジネス環境に適応するために重要なリスキリングの必要性と取り組む上でのステップを徹底解説していきます。
リスキリングとは?
リスキリング(Reskilling)とは、職業能力の再開発、再教育のことを意味します。現代の急速に変化する労働市場において、従業員が新しいスキルや知識を習得し、古いスキルをアップデートするプロセスを指します。以下ではリスキリングの主な特徴と要点を解説します。
1. 技術と業界の変化への従業員の適応
リスキリングは、急速な技術の進化や業界の変化に適応するための方法として、従業員が新しいスキルや知識を習得し、自己成長とキャリアの発展を目指すことを指します。これにより、企業は従業員の将来のスキルギャップを予防し、不安の軽減とモチベーションの向上が見込めます。
2. 組織全体の競争力向上
リスキリングは組織全体の競争力を向上させる重要な要因です。従業員が最新のスキルを持ち、組織が変化に適応できるようになることで、市場での地位を強化し、成長を促進します。
リスキリングが話題になっている背後には、テクノロジーの進化、競争激化、人材の価値観の変化といったビジネス環境の急速な変化により従業員の新しいスキルの獲得や持続可能なキャリアの構築へのニーズが存在します。
リカレント教育との違い
リスキリングと似たような概念として、「リカレント教育」というものがあります。以下ではリカレント教育とは何か、リスキリングの違いについて解説します。
リカレント教育とは?
リカレント(recurrent)とは「繰り返す」「循環する」という意味で、リカレント教育とは、社会人になったあとに教育機関に戻って学習を続け、また就職するという「学習と就労」を繰り返すプロセスです。日本では、仕事を休まず学び直すスタイルもリカレント教育に含まれ、社会人となってから自分の仕事に関する専門的な知識やスキルを学ぶため、「社会人の学び直し」とも言われます。
2. リスキリングとリカレント教育の違い
リスキリングとリカレント教育は一見似ているように思えますが、大きな違いがあります。
リカレント教育は一旦仕事から離れて、大学や専門学校などの教育機関で学ぶことを指し、多くの場合は「個人が自主的にスキルを学ぶ」性質を持ちます。しかしリスキリングは仕事から一旦離れるのではなく、業務と並行しながら、業務に必要なスキルや知識を新しく身につけていくことをいいます。
リカレント教育は主に個人のキャリアアップや生涯現役でいるための学習として行われ、目的が労働者にあるのに対して、リスキリングは企業が自社の変革に向けて必要な人材を育成するという企業側の目的があります。
リスキリングの必要性
企業やリスキリングによるスキルの再習得や向上に取り組む必要性は、複数の要因からなります。以下で、リスキリングの必要性について詳しく解説します。
1. テクノロジーの急速な進化
現代のテクノロジーは驚異的に速いスピードで進化しています。新しいソフトウェアやツール、デジタルプラットフォームが次から次へと登場し、業界や職種に変革をもたらしています。また、自動化やAIの台頭により、一部の仕事が消失し、新たなスキルが求められています。リスキリングを行うことで、従業員や個人がこれらのテクノロジーの変化に適応していくことにつながります。
2. 労働市場の競争激化
採用市場では高度なスキルを持つ人材がますます求められ、こうした人材の獲得競争はより激化しています。そのため、外部から高スキル人材を採用するだけでなく、自社の従業員のリスキリングを通じて組織の生産性を高めていく必要があります。
3. 組織の競争力
また、あらゆる業界・業種で既存事業以外に新規事業を立ち上げ、あらたな収益の柱として育てる動きが加速しています。従業員が最新のスキルを持つことであらたなイノベーション生まれ、組織の競争力を高めることにつながります。
企業でリスキリングに取り組む際のステップ
ここまでリスキリングが注目されている理由と必要性を説明してきましたが、実際に企業がリスキリングに取り組む際には、適切なステップを踏むことが重要です。以下では企業がリスキリングを戦略的に展開するためのステップを解説していきます。
1. 従業員への動機づけ
まずは、なぜ新しいスキルを習得する必要があるのか、従業員がその価値を理解し、自発的に学びたくなる動機づけが非常に重要です。企業は従業員に対して、リスキリングによって個人のキャリアが促進されることや、事業を伸ばす上でのリスキリングの重要性を説いていき、従業員が前向きに取り組めるようにしていく必要があります。
2. スキルマッピングと目標設定
リスキリングのプロセスを開始する前に、従業員のスキルと、新しく必要なスキルは何かを明らかにします。どの従業員がどのスキルを持っているのか、反対にどのスキルを必要とするのかを正確に把握することは、リスキリングプログラムを効果的に遂行する上で欠かせません。必要なスキルは何かを把握したうえで、企業は従業員に伸ばしてほしいスキルと期待する成果を明確な目標として設定します。
3. トレーニングプランの作成
立てた目標に対して、具体的に取り組んでいくプランを明示します。従業員ごとにカスタマイズされていると望ましいです。従業員のスキルや学習スタイルにあわせて、オンラインのeラーニングや外部のワーク所@プ、実戦経験など多彩な方法を活用したトレーニングを実施しましょう。
4. フィードバックと改善
実施した内容やその成果を振り返りましょう。従業員が個人的に成果を振り返るだけではなく、受けたプログラムに対して意見を収集しましょう。フィードバックからは、新たなスキル習得に伴う課題やニーズが出てきます。それらを集約しながら、随時プログラムをブラッシュアップしていきましょう。
5. 成果の測定
フィードバックによる改善と同時に、リスキリングの成果を定量的および定性的に測定します。新たにスキルを習得した人材数や、どの程度までスキルレベルが上がったのか、また実際の業務における生産性の向上、組織の競争力や売上など、ゴールとする指標にあわせてプログラムの効果を確認していきましょう。
まとめ|リスキリング推進には動機づけと環境づくりが欠かせない
リスキリングは、急速な技術の進化や産業構造の変化に適応するために不可欠なプロセスであり、その重要性はますます高まっています。リスキリングを推進するためには、従業員のスキルを可視化し、組織においてどのような人材が必要かを考えたうえで、戦略的なアプローチをとりましょう。
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