「実例に学ぶ。明日からの人事が変わる。」をコンセプトに、人材の採用~活躍・定着に関する最新事例・ノウハウに触れられるエン・ジャパン主催のイベント『Discover HR』。今年度は「人的資本経営」をテーマに開催しています。(人的資本経営とは、人材を資本とみなし人材価値を最大限に活かすことで企業価値を高める経営手法)
ピジョン株式会社管理本部人事部でシニアマネージャーを務める若山さんにご登壇いただき、同社の「人的資本経営」のお取り組みと大切にしている考え方についてお話しいただきました。
ピジョンについて
ピジョンは育児用品を中心にマタニティ、女性ケア、ホームヘルスケア等を扱うメーカーです。私は人事領域における企画設計・導入の実行責任者を務めています。会社の存在意義を自分の部内でも浸透させるため、人事部として存在意義「社員一人ひとりが自分らしく輝く会社にする」を掲げています。
人的資本経営に関連する取り組み
早速ですが、今回のテーマである「人的資本経営」について話していきます。
当社では、会社は”キャリアを与える場所”ではない。自分で思い描いてつかみとるもの。そういう位置づけとしています。そのため、社員一人ひとりが能動的に関わる事ではじめて機能する制度・取り組みになっています。本日は、この中から2つをご紹介します。
Pigeon Frontier Awards(新規発想制度)
年に一度、従業員から自由なアイデアを募集し、形にするプロジェクトです。募集要件は設けておらず、パート・アルバイトの方の応募も大歓迎。コンセプトは「社員が働いていて楽しいと思える時間を増やし、未来にむけて、失敗を恐れず挑戦していくことを応援・表彰する」。
会社が何かしてくれることを待つのではなく、自分たちで会社の未来を作っていこう、楽しいことをしようという発想から生まれたプロジェクトです。
実際にこの制度から、当社のIPキャラクターや新商品が生まれました。
プロジェクトの過程を通して成長実感を味わうことや、成功体験を仲間と分かち合うことで、「なりたい自分」「やりたい仕事」を叶えることができています。これは会社に対する想いを深めていくことにも繋がっています。
Accelerate My Career (AMC) プログラム
こちらは、社員自らキャリアを考え、手にすることができる機会を支援するプログラムです。具体的には、社内公募や社内インターン等を通じて他部署の仕事を経験することや、社外ではベンチャーなど他企業にて一定期間仕事を兼務する社外留職やボランティア・プロボノ休暇といった制度があります。
実は昨年に人事制度を変えたタイミングで、社員にメッセージを出しました。それは、「プロフェッショナル人材を目指そう。市場価値のある武器を持って、戦える人材になっていこう」ということです。
当社の考えるプロフェッショナルとは、「高い専門性と人を導く力」、「新たな価値を生み出す力」、「自立し自律的に行動できる力」を持っていること。このような力を社員自ら手にすることができるような機会を支援しています。
この制度を公表した当初は戸惑っていた社員が多かったのですが、2年経ち、徐々に制度の考え方が浸透してきました。AMC制度の利用者数が年々増加していることからも、「キャリアは自分で考えるもの」と自分事として捉える社員が増えてきたと実感しています。
Pigeon Wayから始める人的資本経営
最も大事なのは、1つ1つの施策ではなく、これらの施策をしっかりと機能させることだと考えます。
そのためには何が必要なのか。それは社員の心と心、社員と会社を繋ぐことです。当社は『Pigeon Way』がその役割を果たしています。
『Pigeon Way』とは、私たちの“心”と“行動”の拠り所であり、すべての活動の基本となる考え方です。経営理念、社是、存在意義やビジョン、基本となる価値観、行動原則、これらがすべて明記されています。 当社で働くどの国のどの社員も”根っこ”の部分にPigeon Wayを共通して持っており、これが会社と個人を結びつけています。
PigeonWayの浸透は、スローガンのように掲げるだけではなく、あらゆる浸透施策を行い、形にしてきました。
- 経営陣が海外拠点を含む全拠点を訪問し、社員と対話の機会をつくる。
- 全社員がMBO(業績目標)でストーリーを作成し、発表の機会をつくり全社で共有する。
- 社内報にて活動を配信ツール化し、入社日に配布する。 等
こういった1つ1つの施策により、徐々にPigeon Wayが社員に浸透し、次第に大きなうねりになっていきました。
現在では、経営方針や事業戦略、そして人材戦略を考えるうえでも、まずPigeon Wayに沿っているかを前提に、施策を考えたり、振り返ったりしています。 仕事をする中で判断に迷う場面でも「これは”誠実”と言えるか?」という言葉が出るなど、Pigeon Wayが日常の仕事に浸透しています。
人的資本経営に繋がるあらゆる施策を実施するうえで、何を行うにしてもPigeon Wayが土台にあります。
その共通の繋がりがあることで社員との信頼関係が築かれ、そこではじめて新しい取り組みや制度が機能してくると考えています。
成果
こうした様々な取り組みにより、直近5年は離職率が低下。女性管理職比率の増加という成果に繋がっています。売上はコロナの影響を受けていますが、そのような中でもエンゲージメントには一定レベルで効果が出ていると言えます。
あらゆる施策の実行において、一番大切なことは『Pigeon Way』。すべての活動の基本となるこの考え方が浸透しているからこそ、会社と社員が深く結びつき、よりよい組織になっていく。人的資本経営に取り組む上で、大切な考え方を教えていただきました。
人的資本経営のためにエン・ジャパンができること
エン・ジャパンでは、人的資本経営に役立つタレントマネジメントシステム『Talent Viewer(タレントビューアー)』をご提供しています。さまざまな人材の現状、人事課題を可視化することができます。お気軽にお問い合わせください。