「キャリア面談を導入したものの、業務の進捗確認や異動希望のヒアリングで終わっている」「管理職によって面談の質に差がある」といった課題を感じている人事担当者も多いのではないでしょうか。
キャリア面談の場を設けるだけでは従業員のキャリア自律が進むとは限りません。面談の目的を明確にし、誰が実施するのか、面談で得た気づきをどのような行動や支援につなげるのかまで、きちんと設計する必要があります。
本記事では、キャリア自律を促す面談の意味や期待できる効果、面談者の選び方、直属上司が実施する場合の進め方を解説します。
この記事の要約
- キャリア自律を促す面談とは、従業員が自分の経験、強み、価値観を整理し、今後のキャリアを主体的に考え、次の行動を決めるための対話です。
- 面談では、上司が答えやキャリアプランを与えるのではなく、質問と傾聴によって従業員の自己理解や意思決定を支援します。
- キャリア面談の実施者は直属上司が一般的ですが、目的や相談内容に応じて、人事担当者や社内外のキャリア専門家が担当する方法もあります。誰が実施するかを含め、面談制度全体を設計することが人事の重要な役割です。
キャリア自律を促す面談とは
キャリア自律を促す面談とは、従業員自身が経験や価値観を振り返り、自らキャリアの方向性を考えて行動できるようにするための対話です。ここでは、キャリア自律とキャリア面談の意味を整理し、1on1や評価面談との違いを解説します。
キャリア自律とは
キャリア自律とは、従業員が自分の価値観や強み、置かれている環境を踏まえ、自らのキャリアについて考え、選択し、行動することです。
単に「希望する仕事を選ぶこと」だけを指すものではありません。自分は何を大切にしたいのか、どのような経験を積みたいのか、現在の仕事や組織のなかで何ができるのかを考え、必要な学習や挑戦に取り組むことまで含みます。
厚生労働省は、主体的なキャリア形成について、キャリアの見通しや自己啓発を個人だけで行うのではなく、それらを実現できる環境が身近にあることが重要だと指摘しています。また、キャリアコンサルティングを通じて、自らの適性、能力、関心などへの気づきと、仕事への理解を深めることで、自分に合った仕事を主体的に選択できるようになることが期待されています。
つまり、キャリア自律は従業員を突き放し、「自分のキャリアは自分で考えてください」と任せることではありません。本人が判断するために必要な情報、対話の機会、学習機会、仕事の選択肢を企業が用意することも、キャリア自律支援の一部です。
最終的に選び、行動するのは本人です。一方、人事と上司には、本人が選択できる状態をつくり、行動を後押しする役割があります。
キャリア面談とは
キャリア面談とは、従業員のこれまでの経験、強み、価値観、仕事に対する希望、今後のキャリアなどについて対話する面談です。
その目的は、異動や昇進の希望を聞き取ることだけではありません。従業員が自分の考えを整理し、今後身につけたい能力や挑戦したいことを言語化したうえで、次に取る行動と会社が提供できる支援を話し合います。
面談で扱うテーマには、例えば次のようなものがあります。
- これまでに経験した仕事と、そこから得た学び
- 本人が認識している強みや課題
- 仕事でやりがいを感じる場面
- 今後増やしたい経験や身につけたい能力
- 興味を持っている役割、職種、事業領域
- 現在の仕事とありたい姿とのつながり
- 次回の面談までに取り組むこと
- 上司や人事に支援してほしいこと
キャリア面談の主役は従業員です。面談者が望ましいキャリアを決めたり、具体的な答えを与えたりするのではなく、対話を通じて本人の自己理解と意思決定を支えます。
ただし、面談者は話を聴くだけでよいわけではありません。必要に応じて、本人が気づいていない強みをフィードバックしたり、社内の仕事や学習機会に関する情報を提供したりすることも重要です。
パーソル総合研究所が紹介した2025年の調査分析では、上司がキャリア面談の目的や意義を伝えることや、今後のキャリアに役立つ情報を提供することが、中期的なキャリアビジョンと短期的な取り組みの明確化にプラスの影響を与えていました。キャリア面談には、傾聴に加えて、具体的な情報提供と面談後の支援も求められると考えられます。
キャリア自律を促す面談とキャリア面談は同じ?
キャリア自律を促す面談は、キャリア面談の目的やあり方を示すものです。両者は密接に関係していますが、すべてのキャリア面談がキャリア自律につながるとは限りません。
キャリア面談という名称であっても、会社が用意したキャリアパスを一方的に説明するだけだったり、上司が異動・昇進の希望を確認するだけだったりすれば、本人の自己理解や意思決定を十分に支援できない可能性があります。
キャリア自律を促すためには、少なくとも次の要素が必要です。
- 従業員自身がこれまでの経験を振り返る
- 自分の強み、価値観、関心を整理する
- 今後の方向性や選択肢を自分なりに考える
- 次に試す行動を本人が選ぶ
- 上司や人事が必要な情報と機会を提供する
- 面談後も一定期間フォローする
以上を踏まえ、本記事では、従業員が自己理解を深め、自らキャリアの方向性を考え、次の行動を決めるためのキャリア面談を「キャリア自律を促す面談」と定義します。以降は、読みやすさを優先して「キャリア面談」と表記します。
キャリア面談と1on1・評価面談の違い
キャリア面談、1on1、評価面談は、いずれも上司と部下が対話する機会ですが、主な目的と時間軸が異なります。
キャリア面談は、中長期的なキャリア形成を支援することが目的です。これまでの経験、強み、価値観、今後の方向性を扱い、本人の意思と次の行動を整理します。
1on1は、部下の成長支援や日常的な課題の把握、関係構築などを目的に、キャリア面談よりも短い間隔で定期的に実施されます。業務上の困りごとやモチベーションなど、比較的短期のテーマを扱う場合があります。
評価面談は、一定期間の成果や行動を評価し、評価結果を本人へ伝えることが主な目的です。今後の目標や能力開発について話すことはありますが、評価者である上司と評価対象者である部下という関係が前提になります。
パーソル総合研究所は、キャリア面談について、部下の今後のキャリアに関する思いを聴き、その実現に向けて本人が行動することと、上司や組織が支援できることを話し合う場と整理しています。目標管理制度における面談とは異なり、部下のキャリア支援に焦点を当てている点が特徴です。
キャリア面談と評価面談を同じ日に続けて実施すると、従業員が評価への影響を気にして本音を話しにくくなることがあります。人事は、可能であれば実施時期や記録を分け、それぞれの目的と情報の利用範囲を事前に説明するとよいでしょう。
一方、キャリア面談と1on1は必ずしも完全に分ける必要はありません。年1回などの正式なキャリア面談で決めた行動を、日常の1on1で継続的に確認する方法も考えられます。キャリア面談で「考えて終わる」のではなく、日常業務や学習行動につなげるために、両者を連動させることが大切です。

キャリア自律を促す面談の5つの効果
キャリア面談を適切に実施すると、従業員の自己理解や行動を促すだけでなく、人材育成、配置、エンゲージメント、定着などにもよい影響を与える可能性があります。ただし、面談の実施だけで効果が生まれるわけではなく、面談後の支援と組み合わせることが必要です。
1.従業員の自己理解が深まる
キャリア面談では、従業員がこれまでの経験を言葉にし、そのときに発揮した能力や感じたやりがいを振り返ります。対話を通じて、本人が一人では気づきにくかった強み、価値観、興味の方向性が見えてくることがあります。
本人が「管理職になるか、専門職になるか」といった明確な答えを持っていなくても問題ありません。まずは、どのような仕事で力を発揮できたか、何に違和感があるか、どのような経験を増やしたいかを整理することで、次の選択肢を考えやすくなります。
厚生労働省の「令和4年版 労働経済の分析」では、キャリアコンサルティングを受けた人は、受けていない人に比べて、自ら職業生活設計を考えていきたいと回答する割合が高い傾向にあると報告されています。ただし、これは両者の関連を示すものであり、面談だけによる因果関係を示すものではない点には注意が必要です。
2.主体的な学習や行動につながる
今後の方向性と現在地が整理されると、従業員は「何を学べばよいか」「どのような経験を積めばよいか」を考えやすくなります。
例えば、将来プロジェクトマネジメントに携わりたい従業員であれば、すぐに異動することだけが選択肢ではありません。現在の部署で小さなプロジェクトの進行役を担当する、関連する研修を受ける、経験者から話を聞くといった行動も考えられます。
人事と上司には、本人の希望をすべてかなえることではなく、本人が次に試せる現実的な行動を一緒に探すことが求められます。
パーソル総合研究所のキャリア面談に関する調査分析では、面談シートの入力やキャリアの棚卸し、社内の先輩や知人との対話などが、短期的な取り組みの明確化にプラスの影響を与えていました。中長期的なキャリアビジョンをすぐに描けない場合でも、短期的な行動を設定することが一つの方法です。
3.上司と従業員の相互理解が深まる
上司が業務成果だけでなく、従業員の価値観、関心、将来への不安を知ることで、日常の関わり方や仕事の任せ方を見直すきっかけになります。
一方、上司が本人に期待する役割や、現在の仕事で得られる経験を伝えることにより、従業員も組織からの期待を理解しやすくなります。
キャリア面談は、本人の希望を会社へ伝えるだけの場ではありません。本人が取り組みたいことと、組織が提供できる経験や期待する役割の接点を探す場でもあります。
パーソル総合研究所の調査では、キャリア面談について「キャリアにとって役立つ」「本音を話せる」と捉える部下が6~7割いる一方、上司が自身の意向を一方的に押し付けることや、会社の都合を優先することは、部下にネガティブな印象を与えることが示されました。また、上司への信頼が高いほど、面談を役立つと捉える部下が多いという結果も紹介されています。
4.配置や育成を考える材料が得られる
複数の従業員との面談を通じて、人事と上司は、本人が希望する経験、保有している能力、今後伸ばしたい能力を把握できます。これらは、能力開発計画、研修、配置、社内公募などを検討する際の参考情報になります。
ただし、面談内容を本人に説明せずに異動や評価へ利用すると、従業員が本音を話さなくなるおそれがあります。誰が記録を閲覧するのか、どの情報を人事と共有するのか、何の目的で利用するのかを明確にすることが不可欠です。
面談内容を個人単位の異動判断だけに利用するのではなく、「特定の年代で将来への不安が増えている」「管理職以外のキャリアパスが見えにくい」といった組織課題を把握する目的で、個人が特定されない形に集約する方法もあります。
5.エンゲージメントや人材定着につながる可能性がある
従業員が自分の将来と現在の仕事とのつながりを見いだし、会社から支援されていると感じられれば、仕事への意欲や組織への信頼が高まる可能性があります。
ただし、「キャリア面談を実施すれば離職率が下がる」とは言い切れません。面談で本人の希望を聴いても、上司や会社が何も行動しなければ、かえって期待を損なう可能性があります。
キャリア面談を定着やエンゲージメントにつなげるには、対話だけでなく、仕事のアサイン、研修、社内公募、他部署との交流、次回面談でのフォローなど、行動につながる支援を組み合わせる必要があります。
キャリア面談は誰が実施する?人事が考えたい面談者の選び方
キャリア面談の実施者は直属上司が一般的ですが、必ず上司でなければならないわけではありません。人事は面談の目的や対象者、相談内容、面談後に必要となる支援を踏まえて、適切な実施者を設計する必要があります。
直属上司が実施する場合
直属上司がキャリア面談を実施する最大の強みは、従業員の日常の仕事ぶりを理解し、面談後も業務を通じて継続的に支援できることです。
直属上司が実施する強み
- 日常の仕事や成果、行動を把握している
- 本人が気づいていない強みを具体的に伝えられる
- 現在の仕事と今後のキャリアを関連づけられる
- 新しい仕事や役割を任せることができる
- 面談後も1on1などで継続的にフォローできる
- 部署内外の人や仕事を紹介できる
例えば、本人が「企画の仕事に興味がある」と話したとき、上司はすぐに異動を約束できなくても、現在の部署で改善提案の作成を任せたり、企画部門の社員を紹介したりできます。キャリア形成につながる小さな経験を日常業務のなかで提供できることは、直属上司の大きな強みです。
直属上司が実施する課題
- 評価への影響を気にして、従業員が本音を話しにくい
- 業務の進捗確認や指導の時間になりやすい
- 上司自身の経験や価値観を押し付ける可能性がある
- 部署内の選択肢に話が限定されやすい
- 面談の質が上司のスキルに左右される
- 本人の希望をかなえられないことを理由に、面談を避ける場合がある
上司によるキャリア面談の有効性を検討した研究では、国内企業で上司とのキャリア面談を経験した正社員14人への調査から、上司が部下との心理的な親和関係を築き、キャリア面談の本質を理解したうえで実施することが、面談の有効性を高めると示されています。
そのため、直属上司に面談を任せる場合、人事は面談シートを配布するだけでなく、面談の目的、傾聴や質問の方法、評価面談との違い、面談後の支援方法まで伝える必要があります。
人事が実施する場合
人事担当者がキャリア面談を実施する方法もあります。部門を越えたキャリアの選択肢を提示したい場合や、直属上司には話しにくい内容を扱う場合に適しています。
人事が実施する強み
- 全社の人事制度やキャリアパスを把握している
- 部門を越えた仕事や異動の選択肢を紹介できる
- 研修、社内公募、自己申告制度などの情報を提供できる
- 直属上司との関係や職場環境について相談を受けやすい
- 複数部門の面談を通じて、共通する組織課題を把握できる
- 面談結果を育成施策や人事制度の改善に生かせる
例えば、「現在の上司に異動への関心を伝えると、評価に影響するのではないか」と不安を感じる従業員にとって、人事との面談は比較的相談しやすい場になる可能性があります。
人事が実施する課題
- 従業員の日常の仕事ぶりを十分に把握していない
- 面談内容が評価や異動に使われると警戒される場合がある
- 対象者が多い場合、人事の工数が大きくなる
- 面談担当者によって質問や支援の質に差が出る
- 面談後の日常的なフォローを行いにくい
- 上司と連携しなければ、仕事のアサインにつなげにくい
人事が実施する場合は、「人事だから本音を話しやすい」とは限りません。面談内容がどこまで記録され、上司や経営層に何が共有されるのかが分からなければ、従業員は慎重になります。
人事は、面談の冒頭で守秘の範囲、記録の目的、共有する情報、本人の同意が必要な内容を説明する必要があります。また、個人の要望をそのまま上司に伝えるのではなく、本人と共有方法を相談することも重要です。
社内外のキャリア専門家が実施する場合
国家資格キャリアコンサルタントなど、社内外のキャリア専門家が面談を実施する方法もあります。
厚生労働省は、キャリアコンサルタントを、労働者の職業選択、職業生活設計、職業能力の開発・向上に関する相談に応じて助言や指導を行う専門家と位置づけ、相談環境の整備や企業への導入を推進しています。
キャリア専門家が実施する強み
- 専門的な傾聴や質問を通じて、本人の考えを整理できる
- 上司や人事より利害関係が少なく、本音を話しやすい
- 社内では言いにくい悩みや迷いを扱いやすい
- 本人が持つ前提や思い込みに第三者の視点から働きかけられる
- 年代や役職に応じたキャリア課題を専門的に支援できる
キャリア専門家が実施する課題
- 日常業務や社内事情を十分に把握できない場合がある
- 社内で提供できる仕事や制度の情報が不足することがある
- 面談で見えた課題を配置や育成へ直接つなげにくい
- 外部へ依頼する場合は費用がかかる
- 守秘義務と会社へのフィードバック範囲を整理する必要がある
厚生労働省が推進するセルフ・キャリアドックでも、キャリアコンサルティング面談、キャリア研修、実施後の振り返りなどを組み合わせた体系的な支援が想定されています。専門家との面談を単発で終わらせず、人材育成の方針や社内制度と結びつけることが重要です。
面談者別の主な強み・課題
| 面談者 | 主な強み | 主な課題 | 適している場面 |
|---|---|---|---|
| 直属上司 | 仕事ぶりを把握し、業務のアサインにつなげられる | 評価を気にして本音が出にくい | 日常業務とキャリア形成を結びつけたい場合 |
| 人事 | 部門横断の制度や選択肢を提示できる | 日常の仕事ぶりを把握しにくい | 上司に相談しにくい内容や全社的なキャリア支援 |
| キャリア専門家 | 専門的かつ中立的な対話ができる | 社内事情や仕事の機会を把握しにくい | 節目のキャリア支援や専門的な相談 |
誰が面談するかを人事が設計する
キャリア面談では、全従業員に同じ面談者を割り当てる必要はありません。人事は、面談の目的と対象者に応じて、直属上司、人事、キャリア専門家の役割を組み合わせることができます。
面談者を選ぶ際は、次の観点を確認しましょう。
面談の目的
自己理解を深めることが目的なのか、日常業務を通じた育成につなげることが目的なのか、セカンドキャリアについて考えることが目的なのかによって、適切な面談者は異なります。
面談者との関係
従業員が安心して話せる関係か、評価者であることが発言に影響しないかを確認します。上司との関係に課題がある従業員へ、直属上司との面談だけを用意しても、十分な対話にならない可能性があります。
必要な情報や専門性
日常の仕事ぶりに基づくフィードバックが必要なら直属上司、全社的な制度や異動の情報が必要なら人事、専門的なキャリア相談が必要ならキャリア専門家が適しています。
面談後に提供する支援
面談後、誰が仕事を任せ、誰が研修や社内公募を案内し、誰がフォローするのかを決めます。面談者が一人ですべてを担う必要はありません。
情報の取り扱い
何を記録するのか、誰が閲覧するのか、何の目的に利用するのかを明確にします。キャリア面談と評価面談で記録を共用する場合は、従業員が安心して話せるかを慎重に検討する必要があります。
継続できる運用か
対象人数、面談時間、担当者のスキル、外部委託費用などを踏まえて、継続可能な仕組みにします。一度だけ全員へ実施するより、対象者を絞って試行し、改善しながら広げる方法も考えられます。
例えば、次のような複線型の設計が可能です。
- 全従業員には、直属上司が年1回キャリア面談を実施する
- 面談後の行動は、毎月の1on1で確認する
- 希望者には、人事または社内キャリア相談窓口との面談を用意する
- 管理職候補には、直属上司と人事が役割分担して面談する
- シニア社員には、専門家を交えたキャリア面談を実施する
- 直属上司との関係に悩む従業員には、第三者との面談を案内する
重要なのは、「誰が面談するか」だけを決めるのではなく、それぞれの面談者が何を担い、どのように連携するかまで設計することです。
キャリア自律を促す面談の進め方|管理職に人事が伝えたい6ステップ
ここからは、直属上司がキャリア面談を実施するケースを想定し、人事担当者が管理職へ伝えたい進め方を6つのステップで解説します。人事担当者や社内のキャリア支援者が面談を行う場合にも、基本的な流れは共通します。
STEP1│人事が面談の目的と運用ルールを明確にする
キャリア面談を実施する前に、人事は自社で面談を行う目的と、最低限の運用ルールを明確にします。
「キャリア自律を促すため」という説明だけでは、管理職によって面談の捉え方が変わる可能性があります。例えば、次のように目的を具体化しましょう。
- 従業員が自分の強みや価値観を整理できるようにする
- 今後増やしたい経験と、次の行動を言語化する
- 上司が本人の志向を理解し、育成や仕事のアサインに生かす
- 本人が取る行動と、会社が提供する支援を話し合う
目的とあわせて、人事は次の運用ルールを定めます。
- キャリア面談と評価面談、1on1の違い
- 面談の対象者と実施者
- 面談時間と実施頻度
- 記録する項目
- 面談内容を共有する範囲
- 面談後の行動を確認する方法
キャリア面談については、目的や方針を明確にし、面談記録を蓄積する場合には、何に活用するのかをあらかじめ決めることが重要です。
人事は、面談者だけでなく従業員にも目的とルールを周知しましょう。従業員が「異動希望を聞かれる場」「評価に使われる面談」と誤解すると、率直な対話が難しくなるためです。
STEP2│上司が面談の目的と安心して話せるルールを伝える
面談の冒頭では、上司が目的と対話のルールを伝えます。いきなり「将来はどうなりたいですか」と聞くのではなく、何のための時間なのかを共有することが大切です。
例えば、次のように伝えます。
今日の面談は、評価を決める場ではありません。これまでの経験や、今後増やしたい経験について一緒に整理する時間です。今の時点で明確な目標がなくても問題ありません。話した内容のうち、人事などへ共有した方がよいものがあれば、共有方法を相談して決めましょう。
上司は、本人の希望をすべて実現できると約束する必要はありません。一方で、実現できないかもしれないからといって、希望を否定することも避けます。
まず本人がなぜその希望を持っているのかを聴き、希望の背景にある価値観や得たい経験を理解します。そのうえで、現在の部署でもできることや社内にある選択肢を一緒に考えます。
STEP3│これまでの経験・強み・価値観を一緒に棚卸しする
次に、これまでの仕事や経験を振り返ります。職務経歴を順番に確認するだけでなく、本人が何を感じ、何を学んだのかを掘り下げます。
例えば、次のようなテーマを扱います。
- 達成感を得た仕事
- 難しかったものの、成長につながった経験
- 周囲から評価された行動
- 自分らしく取り組めた仕事
- あまり力を発揮できなかった環境
- 今後も生かしたい能力や経験
上司は、本人の発言をすぐに評価したり、正しい答えへ誘導したりしないことが重要です。「なぜそう感じたのですか」「そのとき、どのような力を使いましたか」と問いかけ、本人の言葉を増やします。
本人と上司で強みの認識が異なる場合、上司は具体的な行動や事実をもとに補足します。「調整力があると思う」だけでなく、「先月のプロジェクトで、意見の異なるメンバーから順番に話を聞き、合意点を整理していた」と伝えると、本人が強みを認識しやすくなります。
STEP4│ありたい姿や関心のある方向を探索する
過去と現在を整理したら、今後の方向性を考えます。ただし、「3年後に何になりたいですか」と明確な答えを迫らないことが大切です。
将来像を描くことが難しい従業員には、次のような観点から探索します。
- 今後増やしたい仕事や経験
- 反対に減らしたい仕事や状態
- 少し興味を持っているテーマ
- 身近で参考にしたい人
- 今より生かしたい強み
- 学んでみたい知識や能力
- 周囲や顧客へ提供したい価値
- 仕事をするうえで大切にしたいこと
「管理職になりたい」「特定の職種へ異動したい」という結論を出すことだけが面談のゴールではありません。本人が興味の方向を言語化し、自分のキャリアについて考え続けられる状態をつくることも成果の一つです。
STEP5│現状とのギャップと選択肢を整理する
ありたい方向が見えたら、現在の経験や能力との間にあるギャップを整理します。このとき、「足りない能力」を指摘するだけにならないよう注意が必要です。
上司と本人は、次のような選択肢を一緒に考えます。
- 現在の業務で試せること
- 少し難易度の高い仕事への挑戦
- 他部署や他職種との協働
- 社内の経験者やロールモデルとの対話
- 研修やeラーニングの受講
- 資格取得や自主学習
- 社内公募や自己申告制度の活用
- プロジェクトや社内活動への参加
上司だからこそ提供できる社内情報や、人とのつながりがあります。パーソル総合研究所の調査分析でも、上司によるキャリアに役立つ情報提供や助言が、キャリアビジョンと短期的な取り組みの明確化にプラスの影響を与えていました。
一方、人事は、管理職が選択肢を提示できるよう、研修、社内公募、異動制度、キャリアパス、社内の相談窓口などを一覧化して共有しておくとよいでしょう。
STEP6│次の行動と会社が行う支援を決める
最後に、本人が行うこと、上司が行うこと、人事が支援することを分けて決めます。
例えば、次のように整理します。
- 本人が行うこと:企画業務を担当する社員へ話を聞く
- 上司が行うこと:本人が参加できる小規模な改善プロジェクトを探す
- 人事が行うこと:関連する研修と社内公募制度の情報を提供する
- 期限:次回の1on1まで、または3か月後まで
- 確認方法:月次の1on1で進捗や気づきを確認する
行動は、大きな異動や昇進に限定せず、本人が少し努力すれば実行できる規模にすると取り組みやすくなります。
また、面談で決めたことを記録して終わりにしないことが大切です。上司が情報を提供すると約束したのであれば、後日必ず連絡します。実現できない場合も放置せず、難しい理由と代替案を本人へ伝えます。
面談で共通認識をつくっても、具体的な行動やフォローが伴わない状態が続けば、従業員が本音を話さなくなる可能性があります。キャリア面談の質だけでなく、面談後の「支援の質」まで人事が確認することが重要です。
キャリア自律を促す質問例
キャリア面談では、将来の目標を直接尋ねるだけでなく、過去の経験、価値観、興味、今後試したいことを順番に整理する質問が有効です。面談者は質問項目をすべて消化しようとせず、従業員の回答から気になった言葉を拾い、対話を深めていきましょう。
面談の緊張を和らげる質問
評価者である直属上司との面談では、従業員が「何を答えるべきか」「発言が評価に影響しないか」と身構えることがあります。そこで、面談の序盤では、正解を求めない質問から始めることが大切です。
例えば、次のような質問が考えられます。
- 最近の仕事で、印象に残っていることはありますか
- 今の仕事について、どのように感じていますか
- 最近、仕事で少しうれしかったことはありますか
- 今日の面談で話しておきたいことはありますか
- 今の時点で、気になっていることや整理したいことはありますか
面談者は回答を聞いたら、すぐに次の質問へ移るのではなく、「なぜ印象に残ったのですか」「そのとき、どのような気持ちでしたか」と掘り下げます。従業員の言葉を要約して返し、認識にずれがないかを確認することも有効です。
従業員が話しにくそうな場合は、「すぐに将来の目標を決める必要はありません」「話せる範囲で大丈夫です」と伝えます。安心して話せる状態をつくることが、その後の自己理解や意思決定を支える土台になります。
経験を振り返る質問
過去の経験を振り返る目的は、職務経歴を確認することではなく、本人が力を発揮できた条件や、経験から得た能力を明らかにすることです。
質問例として、次のようなものがあります。
- これまでの仕事で、最も達成感を得た経験は何ですか
- 難しかったものの、成長につながった仕事はありますか
- 自分なりに工夫したことは何ですか
- 周囲と協力して成果を出した経験はありますか
- これまでの仕事で、もう一度取り組みたいものはありますか
- 反対に、自分の力を発揮しにくかった仕事や環境はありますか
「最も達成感を得た経験は何ですか」という質問には、「なぜ達成感を得られたのですか」「どのような役割を担いましたか」「その経験で身についたことは何ですか」と続けます。
成果の大きさだけに注目しないことも重要です。本人にとって意味のあった経験であれば、目立った実績でなくても構いません。失敗した経験から、粘り強さや調整力などの強みが見つかることもあります。
上司は、普段の仕事で把握している事実を補足できます。ただし、「あなたの強みはこれです」と決めつけず、「私はこの行動を強みだと感じましたが、ご自身ではどう思いますか」と、本人の認識を確認しましょう。
価値観や強みを明らかにする質問
価値観とは、本人が仕事を選び、取り組むうえで大切にしている基準です。強みとは、保有資格や専門知識だけでなく、自然にできる行動や、周囲から評価されやすい能力も含みます。
次のような質問を用いて、本人が大切にしていることを探ります。
- 仕事をするうえで、大切にしたいことは何ですか
- どのような仕事で、やりがいを感じますか
- 時間を忘れて取り組める仕事はありますか
- 周囲から、どのような点を評価されることが多いですか
- 自分では当たり前にできるものの、周囲から感謝されたことはありますか
- 仕事を通じて、誰にどのような価値を届けたいですか
- どのような職場やチームで、力を発揮しやすいですか
「やりがいを感じる」という言葉だけでは、意味が広すぎます。「顧客から感謝されたときです」「難しい課題を解決したときです」といった具体的な場面まで掘り下げましょう。
例えば、「人を支える仕事が好き」という回答があった場合は、「どのような支援をしたときに、特に充実感がありましたか」「一対一で支援することと、仕組みをつくることでは、どちらに興味がありますか」と尋ねます。本人が大切にしている価値や、力を発揮しやすい役割が見えやすくなります。
ありたい姿を探索する質問
将来像を考えるときは、役職や職種だけに限定しないことが大切です。「管理職になりたいか」「どの部署へ異動したいか」だけでは、多様なキャリアの希望を捉えにくくなります。
質問例として、次のようなものがあります。
- 今後、どのような経験を増やしたいですか
- これから身につけたい知識や能力はありますか
- 3年後、どのような役割を担っていたいですか
- 役職や職種にとらわれず、どのような仕事をしていたいですか
- 興味を持っている事業やテーマはありますか
- 社内や社外で、参考にしたい働き方をしている人はいますか
- 今よりも生かしたい強みはありますか
- これからの仕事で、増やしたいことと減らしたいことは何ですか
本人が明確な将来像を持っている場合も、希望する役職や職種だけで対話を終えないようにします。「なぜその仕事に興味があるのですか」「そこで、どのような価値を提供したいですか」と確認すると、希望の背景にある価値観が見えてきます。
将来像は一度決めたら変えてはいけないものではありません。「現時点で関心のある方向」として扱い、仕事や学習を通じて更新してよいことを伝えましょう。
行動を促す質問
キャリア面談では、対話で得た気づきを小さな行動へ落とし込むことが重要です。面談者が行動を指定するのではなく、本人が納得できる選択肢を一緒に考えます。
次のような質問が役立ちます。
- ありたい姿に近づくため、まず何を試せそうですか
- 現在の仕事のなかで、挑戦できることはありますか
- 話を聞いてみたい人はいますか
- 次回の面談までに取り組みたいことは何ですか
- 行動するうえで、障壁になりそうなことはありますか
- 上司や人事から、どのような支援があると進めやすいですか
- 明日から始められることがあるとすれば、何ですか
行動は、異動や昇進などの大きな変化に限定しません。関連する研修を調べる、経験者へ話を聞く、会議で一度進行役を担当するなど、小さく試せる行動でも構いません。
パーソル総合研究所が紹介した2025年の調査分析では、面談シートへの入力やキャリアの棚卸し、社内の先輩や知人との対話が、短期的な取り組みの明確化にプラスの影響を与えていました。中長期的なキャリアビジョンが定まっていない場合も、短期的な行動を置くことは有効な選択肢です。
キャリアの希望が「特にない」社員への質問
従業員から「特にやりたいことはありません」と言われても、意欲がないと決めつけてはいけません。将来像の考え方が分からない、選択肢を知らない、発言が評価に与える影響を心配しているなど、さまざまな背景が考えられます。
この場合は、「将来何をしたいですか」と繰り返すのではなく、現在や過去に焦点を移します。
- 今の仕事で、続けたいことはありますか
- 反対に、今後は減らしたいことがありますか
- 最近、少し興味を持った仕事やテーマはありますか
- これまで比較的うまくできた仕事は何ですか
- 周囲から頼られることが多いのは、どのような場面ですか
- 次に試すなら、どのような経験がよさそうですか
- 半年後、今より少し良くなっていたいことはありますか
- 社内にどのような仕事があるか、詳しく知りたいですか
本人が方向性を描けない理由が、情報不足にある場合もあります。上司は社内の仕事、人事は研修や社内公募などの情報を提供し、本人が選択肢を知る機会をつくりましょう。
キャリア面談の目的は、その場で完成したキャリアプランを作ることではありません。本人が自分について考え始め、次に試すことを一つ選べれば、それも前進です。
キャリア面談で避けたいNG質問・NG対応
キャリア面談では、質問の内容だけでなく、面談者の聴き方や面談後の対応が従業員の受け止め方を左右します。人事は管理職にNG例だけを示すのではなく、「どのように改善すればよいか」まで伝えましょう。
「将来どうなりたい?」だけで答えを迫る
将来像を明確に持つ従業員ばかりではありません。答えられない従業員に対して「目的意識が足りない」と評価すると、面談そのものへの抵抗感が強くなる可能性があります。
過去の経験、現在の関心、増やしたいこと、避けたい状態など、小さく答えられる質問から始めましょう。
上司の経験や価値観を押し付ける
上司が自身の体験を共有することは、選択肢を広げるために役立つ場合があります。しかし、「自分の若い頃は」「管理職を目指すべきだ」といった話が中心になると、本人のキャリアではなく、上司の理想を伝える場になってしまいます。
上司が経験を話す場合は、「一つの例としてお伝えします」と前置きし、最後に「あなたはどう考えますか」と本人へ対話を戻します。
異動・昇進希望の確認だけで終わる
異動や昇進はキャリアの一部ですが、それだけが選択肢ではありません。現在の仕事で増やしたい経験、身につけたい能力、興味のあるテーマなども扱いましょう。
異動希望が出た場合も、可否をすぐに判断するのではなく、なぜ異動したいのか、どのような経験を得たいのかを確認します。希望の背景が分かれば、現在の部署で提供できる経験が見つかることもあります。
評価面談や業務指導にすり替える
評価や目標達成の話が中心になると、従業員は面談内容が評価に使われると考え、本音を控える可能性があります。
キャリア面談では、本人の経験、価値観、今後の方向性に焦点を当てます。改善が必要な業務上の行動を伝える場合は、評価面談や日常のフィードバックなど、別の機会を設けることが望ましいでしょう。
本人の希望を否定する、または安易に約束する
「その異動は難しい」「今の能力では無理だ」とすぐに否定すれば、本人は希望を話さなくなります。一方で、実現可能性を確認せず「人事に伝えておく」と約束することも避けるべきです。
まず希望の背景を理解し、実現に必要な経験や能力を整理します。そのうえで、現時点で提供できる選択肢と、すぐには対応できないことを率直に伝えます。
面談内容を説明なく共有・利用する
面談記録が本人の知らないところで評価や異動判断に使われると、制度への信頼が損なわれます。
人事は、記録する項目、閲覧できる人、利用目的、保存期間を定め、面談前に従業員へ説明します。本人の同意なく共有しない内容と、組織として把握する内容を分けることも重要です。
面談後に何も支援しない
「話を聴いてもらったが、何も変わらなかった」という経験が続けば、従業員は本音を話す意味を感じにくくなります。
面談の最後に、本人、上司、人事が行うことを整理し、期限と確認時期を決めましょう。実現できない場合も放置せず、理由と代替案を伝える必要があります。面談後の具体的な行動やフォローを含めて、キャリア支援と捉えることが大切です。
キャリア面談を機能させるために人事が行う支援
キャリア面談を現場へ任せるだけでは、管理職によって面談の目的や進め方に差が生じます。人事には、制度を設計し、面談者を育成し、面談後の行動を支える環境を整える役割があります。
面談の目的と位置づけを明確にする
人事は、自社がキャリア面談を行う目的を具体的に定めます。自己理解、能力開発、配置、若手定着、シニア社員のキャリア支援など、目的によって対象者や実施者、質問内容が変わります。
評価面談や1on1との違い、面談結果を何に活用するのかも明文化しましょう。パーソル総合研究所の調査でも、キャリア面談の制度設計では、目的と方針を明確にし、記録を蓄積する場合には利用目的を定めることの重要性が指摘されています。
管理職へ面談スキルと社内情報を提供する
管理職には、傾聴や質問だけでなく、面談の目的、評価面談との違い、希望をかなえられない場合の対応、面談後の支援方法まで伝えます。
研修だけで終わらせず、次のような実務ツールを用意すると運用しやすくなります。
- 面談の進行例
- テーマ別の質問例
- NG対応と改善例
- 面談前の確認リスト
- 行動計画の記入欄
- 上司が案内できる研修・制度の一覧
- 判断に迷ったときの相談窓口
上司は社内の仕事や人を紹介できる立場です。人事がキャリアパス、研修、社内公募などの情報を整理して提供することで、上司は傾聴だけで終わらず、具体的な選択肢を提示しやすくなります。
従業員にも「面談の受け方」を伝える
キャリア面談は面談者だけでつくるものではありません。従業員に対しても、面談の目的、事前に振り返る内容、記録の利用目的、話したくない内容を無理に話す必要はないことを伝えます。
事前に簡易なキャリアシートを用意し、これまでの経験、強み、今後増やしたい経験などを書いてもらう方法もあります。ただし、記入量が多すぎると実施そのものが負担になるため、面談で対話を深めるための補助ツールとして設計しましょう。
面談後の選択肢と支援策を整える
面談で本人の希望が明確になっても、挑戦できる機会がなければ行動につながりません。
人事は、次のような施策を組み合わせてキャリア自律を支援します。
- 階層別・テーマ別研修
- eラーニングや自己啓発支援
- 社内公募や自己申告制度
- 部門横断プロジェクト
- 社内副業・兼業
- メンター制度
- 社内外のキャリア相談窓口
- ジョブ・ローテーション
- 他部署の社員との交流機会
厚生労働省が推進するセルフ・キャリアドックも、キャリアコンサルティング面談やキャリア研修などを組み合わせ、体系的・定期的に従業員の主体的なキャリア形成を支援する仕組みです。面談を単独の施策として扱わず、育成方針や人事制度と結びつける視点が求められます。
面談記録と情報管理のルールを定める
キャリア面談では、異動への関心、上司との関係、家庭事情など、慎重に扱うべき情報が出ることがあります。
人事は、少なくとも以下を明確にします。
- 記録する情報と記録しない情報
- 記録を閲覧できる人
- 本人の同意が必要な共有内容
- 評価や配置への利用範囲
- 保存期間と削除方法
- 個人が特定されない形で分析する情報
- センシティブな相談が出た場合の対応窓口
記録項目は必要最小限にし、「本人が取る行動」「上司や人事が行う支援」「次回の確認時期」など、フォローに必要な内容を中心にするとよいでしょう。
実施率だけでなく、面談後の変化を確認する
面談制度の効果を確認するとき、実施率だけをKPIにすると、面談を行うこと自体が目的になりやすくなります。
人事は、次のような指標を組み合わせて確認します。
- 面談の実施率
- 従業員の面談目的に対する理解度
- 安心して話せたと感じる割合
- 面談後に行動を設定した割合
- 上司が支援を実施した割合
- 研修や社内公募などの利用状況
- キャリアの見通しや成長実感
- 上司からの支援実感
- エンゲージメントや定着状況
面談の有無だけでなく、上司の支援、本人の行動、会社の制度利用などもあわせて確認します。離職率やエンゲージメントに変化があっても、キャリア面談だけの効果とは断定せず、部署、勤続年数、上司、制度利用状況などを含めて分析することが重要です。
キャリア自律を促す面談に関するよくある質問
キャリア自律を促す面談とキャリア面談は同じですか?
キャリア自律を促す面談は、キャリア面談のなかでも、本人の自己理解、意思決定、行動を特に重視したものです。 異動希望を確認するだけでなく、本人が経験や価値観を振り返り、次の行動を選び、上司や人事がその実行を支援するところまで含みます。
キャリア面談は人事が実施してもよいですか?
キャリア面談を人事が実施しても問題ありません。 人事には、部門を越えた仕事や制度の情報を提供しやすい強みがあります。一方、日常の仕事ぶりを把握しにくいため、必要に応じて本人の同意を得ながら直属上司と連携します。
キャリア面談では何を質問すればよいですか?
過去の経験、強みや価値観、今後増やしたい経験、次に試す行動の順に質問するのが基本です。 将来像だけを直接尋ねるのではなく、「達成感を得た仕事」「大切にしたいこと」など、本人が答えやすい内容から整理しましょう。
キャリア面談はどのくらいの頻度で行いますか?
全員に共通する唯一の適正頻度はなく、目的や対象者に応じて設計します。 例えば、正式なキャリア面談を年1回実施し、その後の行動を月次の1on1で確認する方法があります。異動、昇進、復職、管理職登用などの節目に追加する方法も考えられます。
本人にキャリアの希望がない場合はどうしますか?
明確な希望を無理に決めさせず、現在の関心や過去の経験から一緒に探索します。 「続けたいこと」「減らしたいこと」「少し興味があること」を尋ね、小さな行動を一つ決められれば十分です。
キャリア面談は離職防止につながりますか?
適切な面談と継続的な支援は、定着によい影響を与える可能性がありますが、必ず離職を防げるわけではありません。 面談後に仕事の機会や学習支援を提供し、従業員が会社から支援されていると感じられる運用が重要です。
キャリア面談の内容を人事評価に使ってもよいですか?
本人への説明や明確なルールなしに、キャリア面談の内容を人事評価へ利用することは避けるべきです。 評価への利用を前提とすると、本音を話しにくくなる可能性があります。利用する情報、閲覧者、目的を事前に示し、キャリア面談と評価面談の記録を分けることも検討しましょう。
まとめ|キャリア面談は本人の意思と行動を引き出す場
キャリア面談は、会社や上司が従業員の将来を決める場ではありません。従業員がこれまでの経験や価値観を振り返り、自ら今後の方向性を考え、次の行動を選ぶための対話です。
一方、キャリア自律は本人任せにすることでもありません。上司には、質問と傾聴によって考えを引き出し、仕事や人に関する情報を提供し、日常業務を通じて成長を支援する役割があります。
人事には、面談の目的、実施者、情報管理、面談後の支援までを一つの仕組みとして設計する役割があります。管理職へ面談方法を伝えるだけでなく、従業員が挑戦できる仕事や学習機会を整え、面談後の行動を継続的に支えることが重要です。
キャリア面談のゴールは、全員に明確なキャリアプランを書かせることではありません。従業員が自分について考え、次の一歩を自分で選び、上司と人事がその一歩を支援できる状態をつくることです。
出典:厚生労働省 令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-
出典:パーソル総合研究所 上司と部下のキャリア面談の効果をより高めるには? ~キャリアビジョンを描き始めた部下に着目して~(キャリア自律セミナー2025|第2回)
出典:パーソル総合研究所 成果につながるキャリア面談 ~部下の本音から見えてくるもの~(キャリア自律セミナー2023 第5回)
面談を、社員の挑戦と成長につなげるために
キャリア面談を従業員の主体的な行動につなげるためには、管理職の面談スキルを高めるだけでなく、面談後の挑戦や学びを後押しする仕組みづくりが重要です。
エンでは、管理職向け研修やeラーニング、適性検査などを通じて、キャリア面談の質の向上と、社員一人ひとりが自ら挑戦・成長できる環境づくりを支援しています。
「管理職によって面談の質に差がある」「面談で得た気づきを行動につなげたい」「キャリア自律施策の次の一手を考えたい」といった課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


