プレイングマネージャーはなぜ疲弊するのか。管理職離れを防ぐために人事ができること

プレイングマネージャーはなぜ疲弊するのか

プレイングマネージャーの疲弊が、多くの企業で深刻な課題となっています。現場業務を担いながら、部下育成や目標管理、評価、上層部との調整まで担うプレイングマネージャーは、組織運営の要ともいえる存在です。しかし近年は業務負荷の増大によって疲弊が進み、管理職自身の負担が深刻化しています。

その影響は管理職本人にとどまりません。プレイングマネージャーの疲弊した姿を目の当たりにし、「管理職になりたくない」と考える若手社員も増えています。また、この問題を放置すれば若手の離職や生産性低下、次世代管理職不足など、組織全体に大きな影響を及ぼしかねません。

本記事では、プレイングマネージャーが疲弊する原因や組織への影響を整理したうえで、人事部門が取り組むべき対策について解説します。

目次

なぜプレイングマネージャーは疲弊するのか?見過ごされがちな5つの原因

「管理職が大変なのは今に始まったことではない」と考える人もいるかもしれません。しかし現在のプレイングマネージャーを取り巻く環境は、以前とは大きく異なっています。業績目標の達成に加え、人材育成やエンゲージメント向上、コンプライアンス対応、ハラスメント防止など求められる役割は年々増えています。

疲弊の背景には、次の5つの要因があります。

1. プレイヤーと管理職の二重責任

プレイングマネージャー最大の課題は、成果創出と組織運営の両方を求められることです。

本来、プレイヤーとマネージャーでは求められるスキルが異なります。プレイヤーは自ら成果を出すことが重要であり、マネージャーは部下を通じて成果を生み出します。 

しかしプレイングマネージャーは、この2つの役割を同時に担わなければなりません。その結果、どちらにも十分な時間を割けなくなってしまいます。 

2. 業務量の過多

人手不足が進む中、多くの企業では管理職もプレイヤーとして第一線に立ち続けています。営業活動、顧客対応、会議、予算管理、採用面接、報告書作成など、業務は増える一方です。

特に中小企業では、管理職の業務が属人化しているケースも少なくありません。特定の管理職しか対応できない業務が多いほど、仕事を抱え込みやすくなります。その結果、業務量が過剰な状態が常態化し、長時間労働や精神的な負荷につながります。管理職個人の努力だけでは対応しきれない状況に陥り、疲弊を招く大きな要因となっています。

3. 部下育成の時間不足

部下育成は重要性が高いものの緊急性が低いため、後回しになりがちです。結果として1on1やフィードバックの機会が減少し、若手社員の成長が遅れます。

さらに部下が育たないことで管理職自身の業務負担が増加するという悪循環に陥ります。

4. 役割設計と評価の曖昧さ

プレイングマネージャーは、自身の成果だけでなくチーム成果や部下育成まで求められる存在です。しかし現場では、その役割の広がりに対して評価基準が十分に整理されていないケースも少なくありません。

部下育成やチームづくりといった重要な取り組みは成果が見えにくく、評価にも反映されにくい側面があります。また、個人の成果、チーム成果、育成成果のどこに重点を置くべきかが曖昧な場合、管理職は常に複数の期待の間で板挟みになります。

こうした状態が続くと、「これだけの責任を負っているのに正当に評価されていない」という認識につながり、疲弊を招く要因となります。

5. 権限と責任のアンバランス

近年の管理職は責任だけが増え、権限は限定されるケースもあります。人員配置や予算決定に十分関与できないにもかかわらず、成果責任だけを負う状態ではストレスが高まります。

「責任はあるが決定権はない」という状況は、疲弊の大きな原因となります。

プレイングマネージャーの疲弊が会社にもたらす3つのリスク

プレイングマネージャーの疲弊は、個人の問題ではありません。組織全体のパフォーマンスを左右する経営課題です。

1. 若手社員の離職

若手社員が退職を決意する理由の一つに、「上司との関係性」があります。忙しい管理職は部下とのコミュニケーションが不足しやすくなります。相談できない、成長実感がない、評価の理由が分からない。

こうした状態が続けば、エンゲージメントは低下し離職につながります。

2. チーム生産性の低下

管理職が常にプレイヤー業務に追われている組織では、チーム全体の方向性が曖昧になります。優先順位の共有や進捗管理が不十分になり、メンバーそれぞれが個別最適で動く状態になりがちです。

短期的には回っているように見えても、中長期的には生産性が低下していきます。

3. 管理職候補が育たない

最も深刻なのは次世代管理職の不足です。疲弊している管理職を目の当たりにすると、若手は昇進を前向きに捉えられません。

「あんなに大変そうなら管理職になりたくない」

こうした認識が広がることで、将来の管理職候補が減少していきます。

若手が管理職になりたがらないのはなぜ?プレイングマネージャー問題との関係

近年、多くの企業で管理職候補不足が課題になっています。背景には若手の価値観変化だけではなく、プレイングマネージャーの働き方そのものがあります。

管理職が疲れて見える

若手は管理職の姿を見て将来像を描きます。毎日遅くまで働き、休日も連絡が入り、常に忙しそうな上司を見て、「自分もなりたい」と思う人は多くありません。

管理職の魅力が伝わらなくなっています。

責任に対して報酬が見合わない

役職手当が付いても、労働時間や責任の増加に見合わないと感じるケースがあります。

特に成果責任、人材育成責任、コンプライアンス責任などが増えている中で、待遇が変化していない企業では不満が生まれやすくなります。

ワークライフバランスへの不安

若手世代は、仕事だけでなく私生活も重視する傾向があります。

管理職になることで働き方の自由度が下がると認識されると、昇進意欲の低下につながります。

キャリア観の変化

かつては管理職になることがキャリアの成功と捉えられる傾向がありました。しかし現在は、専門性を高めるスペシャリスト志向や、多様なキャリアパスを重視する考え方が広がっています。

加えて、プレイングマネージャーの負担増加により、管理職が魅力的なポジションとして映りにくくなっている側面もあります。その結果、「昇進したい」ではなく「今の専門性を高めたい」と考える人が増え、管理職候補の不足につながっています。

プレイングマネージャーを救うために人事ができること

プレイングマネージャー問題は、管理職個人の努力だけでは解決できません。人事が中心となり、組織全体の仕組みを見直す必要があります。

業務の棚卸し

管理職が何に時間を使っているのかを把握し、削減できる業務を洗い出します。

会議や報告資料、承認フローなど、慣習的に続いている業務は意外と多く存在します。

権限委譲の仕組みづくり

管理職に業務が集中する原因の一つは、意思決定が属人化していることです。

メンバーへの権限委譲を進めることで、管理職はマネジメント業務に集中しやすくなります。

結果として部下の成長機会も増加します。

管理職育成の強化

優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーになるとは限りません。

管理職に必要なのは、目標管理、コーチング、フィードバック、組織運営などのスキルです。

昇進後ではなく昇進前から育成する仕組みが求められます。

評価制度の見直し

管理職評価においては、個人成果だけでなくチーム成果や育成成果も評価対象にする必要があります。

部下育成を行うほど損をする制度では、組織は成長しません。

期待する役割と評価基準を一致させることが重要です。

人事データを活用した負荷把握

近年は人事データを活用できる環境が整いつつあります。

残業時間、有給取得率、離職率、エンゲージメントサーベイなどのデータを分析することで、疲弊リスクの高い部署や管理職を早期に把握できます。

問題が顕在化する前に対策を講じることが、人事の重要な役割です。

まとめ

プレイングマネージャーの疲弊は、単なる業務過多ではなく、組織構造の問題です。放置すれば若手離職、生産性低下、管理職候補不足といった形で企業経営に影響を及ぼします。

そして若手が管理職になりたがらない背景には、疲弊した管理職の姿があります。

だからこそ人事には、管理職個人の頑張りに依存するのではなく、業務設計や評価制度、育成施策を見直し、マネジメントしやすい環境を整えることが求められています。

プレイングマネージャー問題の解決は、管理職を守るためだけではありません。これからの組織成長を支える人材を育てるための重要な投資なのです。

エンでご支援できること

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