研修の個別最適化「パーソナライズド・ラーニング」とは?一人ひとりが成長できる研修をつくる3つのステップ

研修の個別最適化「パーソナライズド・ラーニング」とは?一人ひとりが成長できる研修をつくる3つのステップ

価値観や経験、保有スキルの異なる社員がともに働くなか、一律の階層別研修だけでは、一人ひとりの育成課題に十分に対応することが難しくなっています。そこで注目されているのが、社員それぞれのスキルや課題に応じて学びを設計する「パーソナライズド・ラーニング」です。本記事では、パーソナライズド・ラーニングの第一歩として、社員ごとのスキルギャップを把握し、必要な研修を紐づけるための3つのステップを、スキルシートや研修の紐づけ例とあわせて解説します。

この記事の要約

  • 社員によって経験や保有スキル、育成課題が異なるため、共通研修に加えて、一人ひとりに応じた学習機会を設けることが重要
  • 「パーソナライズド・ラーニング」とは、社員それぞれのスキルや課題に応じて、学習内容や方法を設計する考え方
  • 第一歩は「①スキルの標準化 → ②スキルの見える化 → ③スキルと研修の紐づけ」の3ステップ

研修の個別最適化が求められる3つの背景

一律の研修だけでは人材育成をカバーしきれなくなった背景には、大きく3つの変化があります。

1. 働く人の価値観やキャリア意識の変化

「人生100年時代」の到来により、働く人の仕事や成長に対する考え方は多様になっています。働き手の中心になりつつある「ミレニアル世代(1980年代〜1990年代半ば生まれ)」や「Z世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)」は社会課題への関心が高いと言われます。また、エンの調査では、2023年度から2025年度にかけてキャリアの安定を求める「安定志向」に加え、特定の分野で専門性を高めようとする「スペシャリスト志向」が上昇しました。先行きが不透明な環境を背景に、専門性を高め、自らの力でキャリアの安定を築こうとする傾向がうかがえます。

2. 事業環境の変化と必要人材の多様化

市場や顧客ニーズ、ビジネスモデルが変化するなか、企業が競争力を維持するために必要な人材やスキルも多様化しています。

新たな事業や課題に対応するには、特定の経験や能力を持つ人材を採用するだけでなく、既存社員のスキルを把握し、それぞれの役割や課題に応じて育成することが必要です。

3. 生成AIの普及による業務とスキルの変化

生成AIをはじめとするテクノロジーの進展により、業務の進め方や職種ごとに求められるスキルが変化しています。こうした変化に対応するため、社員一人ひとりが自分に必要なスキルを見極め、継続的に学び直す「リスキリング」の重要性が高まっています。

パーソナライズド・ラーニングとは?一律の研修から個別最適な研修へ

パーソナライズド・ラーニングとは、一人ひとりのスキルや経験、育成課題などに応じて、学習内容や方法を個別に設計する考え方です。eラーニング、集合研修、OJT、外部講座などを組み合わせ、それぞれに必要な学びを提供します。ただし、階層別研修のような一律の研修が不要になるわけではありません。組織の方針や役割について共通理解を促す研修を土台としながら、社員ごとのスキルや課題に応じた学習を組み合わせることが重要です。

では、パーソナライズド・ラーニングを実現するには、どのような仕組みが必要なのでしょうか。ここからは、その第一歩となる、社員ごとのスキルギャップを把握し、必要な研修を紐づける方法を3つのステップで解説します。

研修の個別最適化に必要な3つのステップ

研修を個別最適化するには、次の3つのステップを順に進めます。

STEP1 スキルの標準化

最初のステップは、自社の職種や役割ごとに必要なスキルを洗い出し、明文化・分類することです。そのうえで、必要なスキルと評価基準を一覧にした「スキルシート」にまとめます。スキルを整理する際に、参考となるフレームワークの一つが「カッツモデル」です。カッツモデルは、管理者に求められる能力を、次の3つに分類したフレームワークです。

  • テクニカルスキル:業務を遂行するために必要な専門知識や技術
  • ヒューマンスキル:周囲と良好な関係を築き、協働する能力
  • コンセプチュアルスキル:物事の本質や全体像を捉え、課題を概念化する能力

カッツモデルでは、組織の管理階層によって、求められるスキルの比重が異なるとされています。一般的に、現場に近い管理者ほどテクニカルスキルが重視され、上位の管理者になるほどコンセプチュアルスキルの重要性が高まります。

本来は管理者に求められるスキルを整理したモデルですが、自社の職種や役割ごとに必要なスキルを分類する際の枠組みとして応用することもできます。当社では、この3分類に、仕事に取り組む姿勢や考え方を表す「マインド」を加え、次の4つに整理しています。

カッツモデルを応用したスキルの標準化のフレームワーク例。必要なスキルを「マインド(考え方)」「コンセプチュアルスキル(概念化能力)」「ヒューマンスキル(対人関係力)」「テクニカルスキル(業務遂行能力)」の4つに分類し、エントリー、ミドル、ハイとキャリアが上がるにつれてテクニカルスキルの比重が下がり、コンセプチュアルスキルの比重が高まることを示した図

STEP2 スキルの見える化

次に、作成したスキルシートを使って社員一人ひとりのスキルの習得状況を評価・記録します。評価基準は、「できると思う」といった抽象的な表現ではなく、実際の業務で確認できる行動や成果に落とし込むことが重要です。

たとえば、スキルの習得状況を次の4段階で評価します。

  • S:安定して成果を出し、他者を指導できる
  • A:一人で安定して実践できる
  • B:上司や周囲の支援を受けながら実践できる
  • C:知識や経験が不足しており、習得が必要

営業職の一般社員で評価した例は、次のとおりです。

大項目中項目社員①社員②社員③
マインド目標必達性SBB
テクニカルスキル商品理解SAA
テクニカルスキル商品説明AAB
ヒューマンスキル好感演出BAB
ヒューマンスキルヒアリングABC
コンセプチュアルスキル顧客の課題整理ABC
コンセプチュアルスキル課題解決の提案CCC

※上記は、スキルの見える化を説明するための一例です。評価項目や評価基準は、自社の職種、役割、業務内容に応じて設定します。

保有スキルを見える化することで、社員ごとに、すでに身につけているスキルと、今後伸ばす必要があるスキルを把握できます。また、個人の評価だけでなく、部署や役職ごとに評価結果を集計することで、組織全体に共通する育成課題も確認できます。

STEP3 スキルと研修の紐づけ

最後に、STEP2で明らかになったスキル課題に対して、必要な研修コンテンツを紐づけます。まずは、社内外の研修コンテンツを整理し、それぞれがどのスキルの習得・向上につながるのかを明確にします。

STEP2と同じ営業職の例では、次のように整理できます。

大項目中項目関連研修講座
マインド目標必達性目標を必ず達成する人の考え方/目標設定の意義と方法
テクニカルスキル商品理解商品理解 社内デモ動画
テクニカルスキル商品説明商品説明 社内デモ動画
ヒューマンスキル好感演出感じの良さを高める方法/Web会議での見せ方・聞き方
ヒューマンスキルヒアリングアクティブリスニング/提案営業の基本 ヒアリング編
コンセプチュアルスキル顧客の課題整理提案営業の基本 事前準備編/仮説思考力の基礎講座
コンセプチュアルスキル課題解決の提案ロジカルな問題解決法

スキルと研修を紐づけることで、役割上求められるスキルと本人の現在地との差に応じて、人事や上司から研修を提案できるようになります。また、社員自身が伸ばしたいスキルをもとに、自分に合った研修コンテンツを選ぶことも可能です。

ただし、研修をレコメンドし、受講してもらうだけで育成が完了するわけではありません。受講前に研修の目的を本人と共有するとともに、受講後には、学んだ内容を実務で試す機会や上司との振り返りを設けることが重要です。受講後の行動やスキルの変化を確認し、次の育成施策につなげることで、継続的なスキル向上を促します。

「見える化」と「紐づけ」の壁をどう越えるか

研修の個別最適化を進めるには、自社に必要なスキルを定義するだけでなく、社員一人ひとりのスキルを継続的に把握し、研修受講後の変化まで確認する必要があります。

しかし、実際には、評価基準が曖昧で評価者によって判断がばらつく、スキル情報や研修受講歴が複数のファイルやシステムに分散している、スキルと研修の対応関係が整理されていないなどの課題が生じがちです。

こうした課題を解消する方法の一つが、タレントマネジメントシステムの活用です。タレントマネジメントシステムとは、社員のスキルや経歴、評価、研修受講歴などの人材情報を一元管理し、育成や配置に活用するシステムです。

スキルの評価結果と研修情報を一元的に管理することで、社員ごとの育成課題を把握しやすくなり、スキルに応じた研修の提案や、受講後の変化の確認にもつなげられます。

エンでご支援できること

1.タレントマネジメントシステム「Talent Viewer」

エンのタレントマネジメントシステム「Talent Viewer」は、社員名簿や職務経歴、研修受講歴、人事評価、スキルシートなど、ばらばらに存在する人物情報をCSV取り込みや連携で集約します。さらに社員アンケートや適性テスト、評価(MBO=目標管理制度、OKR=目標と主要な成果、360=360度評価)、eラーニング(受講管理)などの機能で新たなデータを加え、人材の見える化やスキルアップ支援などに活用できます。

研修の個別最適化に関わる機能は、3つのステップに沿って次のとおりです。

ステップTalent Viewerの機能
スキルの標準化スキルシートの作成
スキルの見える化スキル情報入力、評価/スキル分析(個人・役職別など)/スキル・育成状況分析/ハイパフォーマー分析
スキルと研修との紐づけeラーニング受講管理機能/eラーニング教材管理/おすすめ研修レコメンド/外部研修コンテンツ連携

2. 課題や対象者に合わせた最適な研修設計

スキルの見える化によって伸ばすべきスキルが明らかになったら、次はそのスキルを実際に伸ばす段階です。

育成施策を考える際は、目的や対象に応じて手法を使い分けることが効果的です。eラーニングは、受講者が自分のペースで学べるため、基礎知識の習得や対象者全体の底上げに向いています。一方、講師派遣型の研修は、演習や対話を通じて実践力を養ったり、受講者が自分の強みや課題を言語化したりする場として有効です。たとえば、事前にeラーニングで基礎を押さえてから研修に臨めば、当日は演習やディスカッションに時間を充てられます。研修後も関連する講座で振り返りを続けることで、学びを現場での行動につなげやすくなります。

エンでは、eラーニング「エンカレッジ」と講師派遣型研修の両方を提供しています。事前のヒアリングで育成課題や対象者の状況を把握したうえで、それぞれの特性を生かした組み合わせをご提案します。

「考え方×能力」を可視化
人材育成を支援するeラーニング

現場での実践につながる研修で
人材育成の課題解決を支援します。

この記事を書いた人

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