全国のセブン‐イレブンを中心にATMを展開し、身近な金融インフラを支えてきたセブン銀行。キャッシュレス化の進展など、事業を取り巻く環境が大きく変化する中、今後の更なる成長に向けて、事業そのものだけでなく、それを担う人材のあり方も見直す必要に迫られていました。 今回は、改革を担ってきた藤元様とその上司の飯島様に、セブン銀行が大切にする「7つの力」を評価や育成の共通軸として、人材育成の仕組みへ落とし込み、現場の変化へとつなげてきたプロセスを伺いました。あわせて、正解のない改革を前へ進めるうえで、大切にしてきた考え方にも迫ります。
ご紹介

株式会社セブン銀行
人事部長 飯島 正憲 様
人事部グループ長 藤元 太一 様
(お写真:藤元様)
「このままでは、その先の成長を描けない」
私たちが人財育成のあり方を見直した背景には、事業の将来に対する強い危機感がありました。急速なキャッシュレス化――。もちろんATM事業がすぐになくなるわけではありません。しかし、現金を使う機会が減り、市場の縮小が見込まれる中、これまでと同じ事業を続けるだけで、その先の成長を描けるのか。そんな問いを、私たちは突きつけられていました。同じ頃、社長主導で実施した従業員アンケートでは、組織の停滞感や上司への不満なども表面化。事業と組織の両面で、これまでのあり方を問い直す必要がありました。
これからも世の中に必要とされる会社であり続けるために、これまでの強みを守り、安定を追求するのか。それとも、リスクを取って新たな価値を生み出し、事業そのものを変えていくのか。こうした問いをもとに、2020年には、会社の方向性を議論する経営方針会議「2020会議」を開催しました。そこで打ち出したのが、「新しい文化を創り、新しい収益を上げていく」という方向性です。

その実現には、事業だけでなく、人や組織も変わる必要があります。そこで、人事制度を見直すとともに、人事ポリシーを策定。自ら学び、変化に対応しながら新たな価値を生み出す「自律型人財」の育成を掲げました。さらに、この人財像を日々の行動につなげるため、社員に求める力を「7つの力」として具体化しました。会社全体の方向性を踏まえて課題を捉え、周囲を巻き込みながら行動するための力です。「7つの力」は、将来の経営を担う人財に必要な力であると同時に、社員一人ひとりが会社全体の視点を持って働くための共通言語でもあります。

「7つの力」を、具体的な行動と学びへ
2024年には、全社員の行動評価にも「7つの力」を導入しました。しかし、社員に求める方向性を示すだけでは、「具体的に何を学び、どう行動すればよいのか」が分かりにくく、浸透しにくいという課題も見えてきました。そこで、「7つの力」を具体的な学びや行動にまで落とし込むために、構成要素となる20のスキルと7つのマインドを整理していきました。
検討当初、必要な能力や知識、マインドの候補はおおむね100以上。本当に当社に必要なものは何か。人事チームで喧々諤々の議論を重ね、整理には約9か月をかけました。「許容」と「受容」のどちらがふさわしいのか。そんな言葉一つひとつについても議論しながら、項目を絞り込んでいきました。最終的に整理した20のスキルと7つのマインドは、ITや財務・会計、リスク管理といった専門知識とは異なり、職種や階層を問わず、全社員に共通して求める力です。
私たちは、これを外部に委ねるのではなく、自社の社員や組織を見ながら、自分たちの言葉でつくることにこだわりました。正解のないテーマだからこそ、自分たちで考え、議論し、一つの体系にしていく。その過程そのものが、人事メンバーの「7つの力」への理解を深める機会になりましたし、チームとしての成功体験にもなっています。
評価と育成を、一つの軸でつなぐ
人事制度や手当、働く環境の整備を進める一方で、制度の運用面では、年功序列的な状態や、役割・成果に見合わない処遇が残り、「自律型人財」の育成につながりきっていませんでした。
そこで、人事制度と評価、タレントマネジメント、教育体系を、「7つの力」と20のスキル・7つのマインドという共通の軸でつなぐことを重視しました。評価で求める力と、育成で伸ばす力をそろえることで、社員一人ひとりが「自分はいまどこにいて、次に何を伸ばせばよいのか」を分かる状態にしたかったからです。その一環として、全職種・全階層を対象にセルフチェックと上長チェックを実施。役職や等級ごとに求める水準を定め、自分の現在地と、求められる状態との差を確認できるようにしています。
チェックの結果は研修設計にも反映しています。研修会社には対象となるスキルやマインドを共有し、「なぜこの研修を行うのか」「どの力を伸ばすのか」「何を持ち帰ってほしいのか」を明確にしたうえで、受講者にも伝えています。
こうして、20のスキルと7つのマインドを軸に、行動評価、チェック、eラーニング、階層別研修をはじめとする各種研修と接続しています。会社が求める人財像を、評価だけで終わらせず、社員一人ひとりの具体的な学びにつなげていく考え方です。

エンを選んだのは、『学びやすさ』と人財要件に沿った支援
こうした考え方を、社員一人ひとりの学びにつなげる手段の一つがeラーニングでした。以前から希望する社員には別のeラーニングを提供していたものの、多数の講座の中から自分に必要なものを選びにくく、忙しいなかで最後まで視聴しにくいという課題がありました。
そこで全社員を対象に導入したのが、エンのeラーニングサービス「エンカレッジ」です。一本あたりの所要時間が一目で把握でき、隙間時間でも「これなら受講できる」と思えるコンパクトな構成であること。必要なテーマを幅広く扱いながらも、選択肢が広がりすぎていないことも導入の決め手になりました。導入後は、私たちが定めた行動ガイドラインや等級定義をエンに共有。各等級に求める行動を踏まえ、20のスキル・7つのマインドとエンカレッジの講座を紐づけています。

同じ考え方は、階層別研修にも反映しています。まず「どの力を伸ばすための研修なのか」を明確にし、そのうえで必要な研修へ落とし込む。研修の冒頭でも、「この研修がどの力につながるのか」「何を学んでほしいのか」を受講者に伝えています。研修というものは、必ずしも前向きに受け止めてもらえるものではありません。人事から案内が届いても、「この忙しいときに」「また研修か」「なぜこの研修を受けるのだろう」と感じる人もいると思います。
だからこそ、実施する側としては、研修を行うこと自体を目的にはしたくありません。「セブン銀行にとって本当に必要なのか」「何のために実施するのか」を考え、社員がその意義を理解し、納得して受けられる研修にする。人事の意図と受講する社員の受け止め方にギャップがあったとしても、その差を小さくする努力はできると思っています。エンには、こうした私たちの考えや変革のスピードに合わせて支援してもらっています。担当営業の脇丸さんはレスポンスが速く、必要に応じてエン社内の企画担当者や専門家を巻き込みながら、議論を進めてくれました。決まったサービスを提供するだけではなく、私たちがやりたいことに沿って、必要な人や知見をつないでもらえることは大きかったと感じています。

「やる」と決め、チームでやり切る
制度や施策を動かすために欠かせなかったのが、人事自身の当事者意識だと。私が大切にしてきたのは、「自分たちが動かなければ、会社は変わらない」という覚悟です。前職で教えられ行動してきたことが今では自分のアイデンティティとなり、「会社にとって本当に必要」なら、自分たちが責任をもってやります。現場の声を拾い、関係者と何度も壁打ちをしながら、納得できるところまで考え抜きます。
人事部長の飯島からは、私の強みを「とことん突き詰め、最後までやり切る力」だと言ってもらっています。現場の意見を聞き、議論を重ねたうえでチームとして提案するからこそ、飯島にも内容を納得してもらえる。そのうえで上司に素早く判断してもらえることは、改革を進めるうえで非常に大きかったと思います。

一方で、改革は一人では進められません。メンバーに仕事を任せる時も一人だけにお願いするのではなく、リーダーを決めた上で複数人に任せ、周囲を巻き込み、当時者を増やしながら進めることを大切にしています。チームで考え抜き、必要だと判断したら覚悟を持ってやる。そして最後は責任者が決める。その積み重ねが、改革を前へ進めています。
700人に、700通りの働きがいを
一連の取組みを進めるなかで、社員からも少しずつ変化を実感する声が聞かれるようになりました。
「人事が本気で人を変えようとしていることを感じる」
「人財育成が体系立てて行われていることが見える」「とてもよい取組みだと思う」
人事制度から、スキル・マインドの定義、チェック、eラーニング、研修までを一つにつないできたことで、私たちが何を目指しているのかも、少しずつですが、社員に伝わり始めていると感じます。体系立てて取り組むことは、以前から「やったほうがいい」と思われながら、なかなか実現できていなかったことでした。それを実際に形にし、社員にも実感してもらえていることには手応えを感じています。こうした取組みは外部にも評価され、2026年2月には、第6回CSA賞※「20代に薦めたい『次世代型人材』創出企業」を受賞しました。
ただ、人事の取組みに終わりはありません。次の課題として向き合っているのが、社員一人ひとりの働きがいです。働きやすい環境を整えるだけでは、働きがいは生まれません。社員が約700人いれば、働きがいも700通りあります。何に意欲を感じ、どのような働きかけで力を発揮できるのかも、一人ひとり違います。だからこそ現在は、マネジメント層のサポートを重視しています。一人ひとりが何にやりがいを感じ、何に動機づけられるのかを捉え、その人に合った関わりができる。そんな組織を目指しています。

※CSA賞:一般社団法人CSA経営協会が、社会課題の解決と高い収益性を両立しながら、これからの社会に必要な若手人材の育成に取り組む企業を表彰する賞。CSAは「Career Select Ability(キャリア自己選択力)」の略。

セブン銀行の人事部として大切にされているのは、「人事も、売上と利益を生み出すことに、人と組織の側面から責任を持つ」という考え方です。人事制度や研修は、それ自体が目的ではなく、事業を成長させるための手段として捉え、日々の取組みを進めています。そして、会社に必要なことを考え抜くチームと、「やる」と方向を示す責任者。その両方が改革を支えています。
エンが目指すのも、サービスや研修を提供して終わる関係ではありません。企業に悩みが生まれたとき、最初に声をかけてもらえる存在となり、その先にある「本当に実現したいこと」をともに考える。これからも、企業ごとに異なる「こうありたい」という想いに向き合い、その実現に全力で伴走していきます。







