新卒採用の売り手市場が続く中、
「エントリーが集まらない」「ターゲット層からの応募が来ない」というお悩みを伺う機会が増えています。
背景には、若手人口の減少や働き方の多様化など、採用市場の変化があります。 こうした状況下で注目されているのが「採用ブランディング」です。 いかにして自社を”働きたい会社”として認知・共感してもらえるか。その重要性は年々高まっています。
今回は、採用ブランディングの基本と、実際の成功事例をご紹介します。
採用ブランディングとは何か?
一言でいえば、「自社をブランドとして捉え、魅力を発信し、ファンを増やす取り組み」です。
自社の“らしさ”を明確にし、それを学生や求職者に伝わる形で発信していくことが大切になります。

実践の4ステップ
では、どのように始めれば良いのでしょうか?基本となる手順は以下です。
ステップ1 自社採用の現状を客観的に分析する
まずは、エントリー数から内定承諾に至る各フェーズ(認知、興味喚起、説明会参加、面接通過率、内定辞退率など)を数値で可視化します。 これにより、ボトルネックがどの段階にあるのかが明らかになります。 加えて、過去の選考辞退理由や内定辞退理由の傾向を分析し、候補者側の視点からも課題を整理することが有効です。

ステップ2 採用ターゲットを明確にする
採用の目的や今後の組織戦略と照らし合わせながら、「どんな人に来てほしいか」を言語化します。 学歴やスキルだけでなく、価値観・志向性・将来像などの観点からペルソナを描き、実際に社内で活躍している人材の特徴を参考に具体性を高めます。
ステップ3 採用コンセプトを定義する
ペルソナに響く自社の魅力を、理念・カルチャー・育成環境・キャリアパスなどの要素に分解して整理します。 「他社ではなく、なぜ自社なのか」という視点を大切にしながら、自社らしい言葉でメッセージ化していくことが重要です。
ステップ4 “届け方”を設計する
設定したペルソナに応じて、どのチャネル・どのメッセージ・どのタイミングで情報を届けるかを戦略的に設計します。 SNS、採用HP、説明会、動画、社員インタビューなど複数のタッチポイントを統一感のあるメッセージでつなげ、認知から動機形成までの導線を整備します。
成功事例|A社の取り組み
A社では、「営業職」「総合職」での新卒採用において、業界の不人気化も相まって応募数が大幅に減少。 従来のターゲット層へのアプローチだけでは限界があり、打開策が求められていました。
課題分析:なぜ応募が集まらないのか
母集団形成に向けて、他業界志望の学生に認知・興味を持ってもらうことが必要でした。
特に自社と近しいB業界を志望する学生からの応募を高められないかと考えました。

ターゲット再定義:どんな人に来てほしいのか
市況や将来の組織像を踏まえ、求める人財像を“成長意欲が高く、社会貢献への関心が強い人材”へと再設定。具体的な言語化により、広報や選考の一貫性が高まりました。
魅力整理:自社ならではの訴求ポイントは何か
人事チームで「自社で働く魅力とは何か」議論を重ね、以下3つに整理しました。
加えて、B業界を志望する学生の内定率を高めることをKPIと設定。併願者や辞退者に対してインタビューを行い、自社の訴求不足となっていたポイントを明確にしました。
学生からは、以下のような懸念が挙がっていました。
情報設計:どう届ければ、伝わるのか
実際の施策としては、以下のような工夫を実施しました。
- 業界や事業の成長性を示すデータを資料に記載し、事実ベースで安心感を提供
- 会社説明会に役員によるトークセッションを新設し、企業のビジョンやサービスへの思いを立体的に発信
- 自社HPやYouTubeで、縦(昇進スピード)・横(職種間異動)のキャリア事例を数値と共に可視化
これにより、「入社後にやりたいことが変わっても挑戦できる環境」であることを効果的に伝えられるようになりました。
成果
その結果、B業界を志望していた学生の内定者割合が 前年度:6.7% → 今年度:16.5% に増加に変化し、採用目標も達成しました。

まとめ
「エントリーが集まらない」「ターゲット層からの応募が来ない」
そうした声が多く聞かれる今、採用活動はこれまで以上に戦略性が求められています。
採用ブランディングは、自社の魅力を的確に伝え、応募者との接点を質の高いものに変えていくことにも繋がります。一朝一夕で効果が出るものではありませんが、地道な取り組みが、確実に採用力の土台を強くしていきます。
本コラムが、採用活動をブラッシュアップする際のご参考になれますと幸いです。