キャリア自律とは?人材育成や離職防止につながる理由と企業の支援策を解説 

キャリア自律とは、従業員が自身のキャリアを会社任せにするのではなく、主体的に考え、学び、行動する姿勢を指します。終身雇用や年功序列を前提とした働き方が変化するなか、企業と従業員の双方にとって重要なテーマとして注目されています。 

一方で、「キャリア自律を推進すると転職が増えるのではないか」「会社への帰属意識が薄れるのではないか」と不安を感じる人事担当者も少なくありません。しかし実際には、適切な支援のもとでキャリア自律を促進することは、人材育成やエンゲージメント向上、さらには離職防止にもつながります。 

本記事では、キャリア自律の意味や求められる背景、組織にもたらす変化、人事が取り組みたい支援策について解説します。 

目次

この記事の要約

  • キャリア自律は「自己責任」ではなく、企業と従業員が共にキャリア形成に取り組む考え方
  • 1on1や学習支援などを通じて成長機会を提供することが、人材育成やエンゲージメント向上につながる
  • 「キャリア自律=離職促進」ではない。人材育成だけでなく離職防止にもつながる重要な取り組みである

キャリア自律とは 

キャリア自律の意味・定義 

キャリア自律とは、従業員一人ひとりが自身のキャリア形成に主体的に向き合い、必要な知識やスキルを学びながらキャリアを築いていく考え方です。 

従来の日本企業では、配置や昇進、育成の多くを企業が主導してきました。しかし、事業環境の変化が激しい現在では、企業が従業員の将来をすべて保証することは難しくなっています。 

そのため、従業員自身が「どのようなキャリアを実現したいのか」「そのために何を学ぶべきか」を考え、行動することが求められるようになっています。 

ただし、キャリア自律は「すべて自己責任」という考え方ではありません。個人の主体性を尊重しながら、企業も成長機会や支援制度を提供し、双方でキャリア形成に取り組むことが重要です。 

キャリアオーナーシップとの違い 

キャリア自律と似た言葉に「キャリアオーナーシップ」があります。 

キャリアオーナーシップは、自身のキャリアの意思決定権を自ら持つという考え方です。一方、キャリア自律は、その意思決定を実現するために主体的に学び、行動する姿勢まで含んでいます。 

つまり、キャリアオーナーシップが「自分のキャリアの責任を持つこと」だとすれば、キャリア自律は「責任を持ちながら行動すること」と捉えると分かりやすいでしょう。 

企業が注目するキャリア自律の考え方 

近年、多くの企業が人的資本経営やリスキリングを推進するなかで、キャリア自律への関心を高めています。 

変化の激しい時代において企業競争力を維持するためには、従業員が自ら学び続け、新たなスキルを身につけることが欠かせません。企業主導の育成だけではなく、個人の主体性を引き出すことが重要になっています。 

なぜ今、企業にキャリア自律が求められるのか 

終身雇用・年功序列の変化 

かつては「会社に長く勤めれば安定したキャリアを築ける」という考え方が一般的でした。しかし、産業構造や働き方の変化により、終身雇用や年功序列を前提とした人材マネジメントは見直されつつあります。企業が従業員のキャリアを一方的に設計する時代から、個人が主体的にキャリアを考える時代へと移行しているのです。 

人的資本経営への注目 

人的資本経営では、人材をコストではなく価値を生み出す資本として捉えます。企業が持続的に成長するためには、従業員の能力開発やキャリア形成を支援し、一人ひとりの可能性を最大限に引き出す必要があります。その中心にある考え方の一つがキャリア自律です。 

リスキリングや学び直しの重要性の高まり 

DXやAI活用が進むなか、多くの職種で求められるスキルが変化しています。こうした環境に対応するためには、企業が研修を提供するだけでなく、従業員自身が学び続ける姿勢を持つことが重要です。キャリア自律は、学び直しやスキルアップを継続する土台となる考え方といえます。 

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キャリア自律が組織にもたらす好影響 

従業員の主体的な学習や挑戦が増える 

キャリア自律が浸透すると、従業員は自分の成長を自分ごととして捉えるようになります。必要な資格取得に挑戦したり、新たなスキルを学んだりと、主体的な行動が生まれやすくなります。企業にとっても、変化への適応力が高い組織づくりにつながります。 

人材育成が促進される 

人材育成は企業が一方的に与えるものではなく、本人の学ぶ意欲があってこそ効果を発揮します。キャリア自律が進む組織では、学習意欲の高い従業員が増えるため、研修や育成施策の投資対効果も高まりやすくなります。結果として、組織全体の能力向上につながります。 

エンゲージメント向上や離職防止につながる 

自分の成長実感を持ちながら働ける環境は、仕事への納得感やエンゲージメント向上につながります。また、「この会社で自分のキャリアを実現できる」と感じられる従業員は、転職だけを選択肢として考える必要がなくなります。キャリア形成を支援することは、結果的に離職防止にも寄与する可能性があります。 

社内異動やキャリア形成が活性化する 

キャリア自律が進んだ組織では、自身の強みや関心を理解したうえで、新たなポジションや業務への挑戦を希望する従業員が増えます。社内公募や異動制度が活性化し、人材の最適配置にもつながるでしょう。 

キャリア自律が生み出す好循環

キャリア自律を阻む組織の特徴 

キャリア形成を本人任せにしている 

「キャリアは個人の問題だから」と考え、企業が支援を行わないケースがあります。しかし、これはキャリア自律ではなく放任です。従業員が将来像を描けない状態では、主体的な行動も生まれにくくなります。 

上司との対話機会が不足している 

キャリア形成には定期的な対話が欠かせません。日常的なコミュニケーションが少ない職場では、従業員の希望や不安を把握できず、キャリア形成の支援も難しくなります。 

キャリアの選択肢や成長機会が見えにくい 

社内にどのようなキャリアパスがあるのか分からない状態では、将来像を描くことができません。結果として、「成長できるイメージが持てない」という理由から離職につながる可能性もあります。 

挑戦を後押しする制度や風土が整っていない 

新しい業務への挑戦や学習を推奨しない組織風土では、キャリア自律は根付きにくくなります。失敗を過度に恐れる環境では、自発的な行動も生まれにくいでしょう。 

人事が取り組みたいキャリア自律支援 5つの施策 

1. 1on1ミーティングの実施 

1on1は、従業員のキャリア観や目標を把握するうえで有効な手段です。業務上の課題だけでなく、中長期的な成長や将来の希望について対話する機会を設けることが重要です。 

2. キャリア面談・キャリア研修の実施 

自身の価値観や強みを整理する機会を提供することで、キャリア形成への意識を高めることができます。若手だけでなく、中堅層や管理職層にも継続的な支援を行うことが大切です。 

3. 社内公募制度やキャリアチャレンジ制度の導入 

挑戦機会を可視化することは、キャリア自律を後押しする有効な方法です。社内で新たな役割に挑戦できる環境を整えることで、成長意欲の高い人材を活性化できます。 

4. 学習機会やリスキリング支援の充実 

オンライン学習や資格取得支援制度などを整備し、学び続けられる環境を提供しましょう。学習へのハードルを下げることで、自発的なスキル開発を促進できます。 

5. スキルの可視化とキャリアパスの提示 

従業員が現在地と目指す方向性を把握できるよう、スキルマップやキャリアパスを整備することも有効です。将来像が見えることで、主体的な行動につながりやすくなります。 

キャリア自律は「個人任せ」では実現しない 

キャリア自律=離職促進という誤解 

キャリア自律に対して、「転職を後押しする考え方ではないか」という見方をする人もいます。しかし、本来のキャリア自律は転職を推奨するものではありません。

従業員が自らのキャリアを考えた結果として転職を選択することもありますが、それ以上に重要なのは、現在の組織の中でどのように成長できるかを主体的に考えることです。むしろ、キャリアについて考える機会がない、成長機会が見えない、将来像を描けないといった状態のほうが離職リスクを高める可能性があります。

企業がキャリア形成を支援することで、従業員は自社で実現できる成長機会を認識しやすくなり、結果として定着率向上につながるケースも少なくありません。 

企業が担うべき役割 

キャリア自律は、従業員の努力だけで実現できるものではありません。企業には、従業員がキャリアを考え、挑戦し、成長できる環境を整える役割があります。例えば、上司との対話機会を設けること、学習機会を提供すること、社内で多様なキャリアを実現できる仕組みを整備することなどが挙げられます。

重要なのは、「会社が決めるキャリア」と「完全な自己責任」の二択ではないということです。企業が支援し、従業員が主体的に行動する。この両輪がそろって初めて、キャリア自律は組織に根付きます。

キャリア自律は「個人」と「企業」の両輪で実現する

まとめ 

キャリア自律とは、従業員が自身のキャリア形成に主体的に向き合い、学びや挑戦を通じて成長していく考え方です。終身雇用の変化や人的資本経営への注目を背景に、多くの企業でその重要性が高まっています。

また、キャリア自律は人材育成やエンゲージメント向上、離職防止にもつながる可能性があります。ただし、従業員に任せきりでは実現できません。1on1やキャリア面談、学習支援制度、社内公募制度などを通じて、企業が成長機会を提供することが重要です。

キャリア自律を「離職促進策」と捉えるのではなく、従業員が自社で活躍し続けるための支援と考えることが、これからの人材マネジメントには求められているのではないでしょうか。 

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