人材を企業の資本とみなす「人的資本開示」の義務化に向けて、金融庁が検討してきた制度の詳細が固まりました。現在は大手企業を中心に対象となっていますが、今後、中小企業をはじめ対象となる企業は増えるかもしれません。人的資本の情報開示に対応できるよう、開示のポイントや必要な項目について解説します。
人的資本とは?
従業員のスキルや能力、知識など、人に付随する能力を企業の「資本」とする考え方のことです。相対する言葉に「人的資源(人件費はコストとして消費されるという考え方)」があります。近年は「人的資本」の考え方に注目が集まっており、投資して価値を高めることが企業価値の向上に繋がると言われています。
人的資本の開示が求められる背景
人的資本の開示が求められる背景は、大きく次の3つです。
人的資本の価値の高まり
技術革新が進む現代、多くの仕事が新たなテクノロジーに代替され、イノベーションや新たな事業進出における「人」の重要性が高まっています。今後、企業が高い競争力を身につけ、事業環境の変化に適応していくには、人的資本の価値を最大限に活かすことができる仕組みをつくっていくことが大切です。
ステークホルダーの関心の高まり
近年、企業の市場価値の構成要素が有形資産(モノ・カネ)から無形資産(ヒト)に移行しつつあります。そのため、投資家が人的資本などの無形資産を評価する傾向が強まっており、開示を望む声が多くなってきました。実際、アメリカでは2020年の市場価値構成要素において無形資産が90%を占めているようです。
ESG投資への重要度の高まり
ESG投資の根幹は企業経営のサステナビリティ(=持続性)を評価することで、近年重要性が認知されています。ESGに対する関心が高まっている中で、各企業が社会貢献や環境保護に対してどう取り組んでいくのかが重視されるようになってきました。
開示制度のまとめ(必要な対応と開示項目)
人的資本の開示制度ですが、具体的には何をすればよいのでしょうか。
対象
- 有価証券報告書を発行する大手企業(約4000社)
必要な対応
- 2023年3月期決算以降の有価証券報告書への情報記載
開示する項目
・従業員の状況
- 女性管理職比率
- 男性育休取得率
- 男女間賃金格差
・サステナビリティ情報
- 人材育成方針
- 社内環境整備方針
- 人的資本や多様性について測定可能な指標と目標
※指標・目標は実際の結果が異なっても、一律には虚偽記載に問わない。
自主的に情報公開を進めている企業も増えていますが、開示が義務付けられることで企業同士の取り組みを比較しやすくなります。また、人的資本を重視する企業に投資マネーや人材が集まりやすくなれば、従業員をコストとみてきた企業も意識改革を迫られるようになるかもしれません。
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