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生成AI時代の人材育成とは?若手が育つ仕事の任せ方とOJTの見直し方

生成AI時代の人材育成とは?若手が育つ仕事の任せ方とOJTの見直し方

生成AIの普及により、情報収集や議事録作成、資料の下書きなど、これまで若手社員が担当してきた業務を効率化できるようになりました。

一方で、人事担当者や管理職の間では、「AIに仕事を任せると、若手社員が経験を積めなくなるのではないか」「自分で考えず、AIの回答をそのまま使うようにならないか」といった懸念も聞かれます。

本記事では、生成AIによって若手社員の仕事と成長機会がどのように変わるのかを整理したうえで、AIに任せる仕事と若手社員に経験させる仕事の分け方、生成AIを活用したOJT、人事部門が取り組みたい施策について解説します。

この記事の要約

  • 生成AIによって、議事録作成や情報整理など、若手社員が担当してきた仕事が変わりつつある
  • AIに作業を任せるだけでは、若手社員が業務の背景や判断基準、失敗から学ぶ機会を失う可能性がある
  • 若手社員がAIを「メンバー」として動かし、出力を評価して自ら判断する経験を設計することが重要
  • 人事は、求める人材像やAIと人の役割分担を整理し、管理職・OJT担当者を支援する仕組みを整える必要がある

生成AIによって若手社員の仕事はどう変わるのか

生成AIは、文章の作成だけでなく、情報の要約や分類、資料構成の作成など、幅広い業務を支援できます。特に、議事録作成や情報収集、メール・資料の下書きといった、新人や若手社員が最初に任される「入口業務」は、生成AIによる効率化の影響を受けやすい仕事です。

こうした業務は、高度な判断を必要としない一方で、若手社員が仕事の進め方を覚えるうえで重要な役割を果たしてきました。

たとえば議事録を作るためには、会議で使われる言葉を理解し、どの発言が重要なのかを見極め、決定事項や今後の対応を整理する必要があります。その過程で若手社員は、自社の事業、組織内の役割、意思決定の方法、関係者の考え方などを学びます。情報収集や資料作成も同様です。さまざまな情報を読み比べ、重要度を判断し、相手に伝わる順番に並べることで、業界知識や論理的思考力が身につきます。

生成AIを使えば、こうした作業にかかる時間を短縮できます。経験が浅い社員でも一定水準の成果物を短時間で作りやすくなり、早い段階から企画や提案などの仕事に関われる可能性もあります。

一方で、完成に近い成果物が最初から提示されることにより、情報を集める、迷う、確認する、相談するといった途中の経験が省略されることも考えられます。問題は若手社員の仕事量が減ることだけではなく、仕事を覚えるために必要だった経験の順番が変わることです。

出典:三菱総合研究所「AI時代こそ『経験』『判断』重視の若手育成を」

生成AIに仕事を任せすぎることで失われる成長機会

生成AIによる効率化を進める際は、削減される作業時間だけでなく、「その仕事を通じて若手社員は何を学んでいたのか」を確認する必要があります。

業務の背景や組織の文脈を学ぶ機会

生成AIが作成した要約を読めば、会議の決定事項や主な論点は短時間で把握できます。しかし、会議に参加して発言を聞き、議事録として再構成する過程では、要約だけでは分からない情報も得られます。

たとえば、次のような情報です。

  • なぜ特定の案が支持されたのか
  • どのような懸念が示されたのか
  • 誰がどの情報を持っているのか
  • 意見が分かれた背景には何があるのか
  • 組織内で何が優先されているのか

AIが情報を短くまとめることで、発言者の迷いや温度感、その企業ならではの事情が見えにくくなることもあります。若手社員が要約だけを受け取るようになると、表面的な決定事項は理解できても、その背景にある判断の筋道を学びにくくなります。

参考:森正弥氏「『AI時代、若手の育成はどうしたらいいんでしょう?』ー どの業界の方からも立て続けに頂いたこの問題を考えてみる」

自分で考え、試行錯誤する機会

何もない状態から資料を作るときには、情報を探し、構成を考え、文章としてまとめる必要があります。最初からうまくいくとは限らず、上司から指摘を受けて修正することもあるでしょう。

この試行錯誤を通じて、若手社員は「どの情報が不足していたのか」「相手には何が伝わらなかったのか」「次は何を確認すべきか」を学びます。

生成AIが最初から整った文章や構成を提示すると、若手社員はゼロから考える負担を減らせます。反面、AIが出した案をそのまま採用すると、自分なりに仮説を立てたり、複数の選択肢を比較したりする機会が少なくなります。

生成AIを使う場合には、完成した回答を受け取るだけでなく、回答を検証し、必要な情報を加え、別の方法を考える工程を意図的に設けることが重要です。

小さな失敗から学ぶ機会

議事録の記載漏れ、メールの分かりにくい表現、資料の確認不足などは、若手社員が経験しやすい失敗です。もちろん、ミスは少ないほうがよいですが、影響の小さい失敗を経験し、上司や先輩からフィードバックを受けることも、成長には欠かせません。

生成AIによって定型業務が自動化されると、こうした低リスクの練習機会も減っていきます。その結果、若手社員が十分な失敗経験を持たないまま、より大きな判断を任される可能性があります。

従来の入口業務をそのまま残す必要はありません。しかし、その仕事が提供していた失敗と学習の機会を、ロールプレイやケーススタディ、小規模な実践などで補う必要があります。

先輩や他部署と関係を築く機会

若手社員が資料を作成するときは、先輩社員に過去の事例を聞いたり、他部署へ情報提供を依頼したりします。日程調整や社内確認にも、相手の状況を考えながら依頼し、必要に応じて相談する経験が含まれています。

こうしたやり取りを通じて、若手社員は社内の相談先を知り、少しずつ人間関係を築いていきます。

生成AIによって情報収集や調整の一部が効率化されると、人と人が関わる機会も減る可能性があります。そのため、顧客へのヒアリング、現場訪問、他部署との共同プロジェクトなど、人との関係の中でしか得られない経験は、意図的に任せる必要があります。

仕事の品質を見極める機会

生成AIの成果物が適切かどうかを判断するには、その仕事に関する一定の知識が必要です。

業界知識や顧客理解が不足していると、もっともらしい文章を「正しい」と受け取ってしまうかもしれません。AIへ仕事を任せるほど、むしろ人には、出力の抜け漏れや誤り、自社との不一致を見つける力が求められます。

知識労働者319人を対象とした調査では、生成AIへの信頼が高いほど、批判的思考に費やす労力が少なくなる傾向が確認されました。また、生成AIの利用によって、批判的思考の中心が自分で成果物を作ることから、情報の検証、回答の統合、AIが行った仕事の監督へ移ることも示されています。

出典:Microsoft Research「The Impact of Generative AI on Critical Thinking: Self-Reported Reductions in Cognitive Effort and Confidence Effects From a Survey of Knowledge Workers」

若手自身が「AIというメンバー」を持つ時代へ

生成AIによって失われる成長機会に目を向けると、「若手社員にはAIを使わせないほうがよい」と考えたくなるかもしれません。しかし、AIの利用を制限したり、従来の作業をそのまま残したりするだけでは、これからの仕事に必要な能力を育てにくくなります。

重要なのは、若手社員を「AIに仕事を奪われる側」ではなく、「AIに仕事を任せる側」として捉えることです。

生成AIは、目的や条件を伝えることで、情報の整理や複数案の提示、成果物の下書きなどを担えます。その意味では、自分の仕事の一部を依頼できる「メンバー」と捉えることもできます。

一人ひとりがAIへ仕事を依頼する時代には、若手社員にも早い段階から、仕事を分解して任せ、成果物を評価する基礎的なマネジメント能力が求められます。必要な能力は、大きく次の4つに整理できます。

AIに任せる仕事を決める

まず必要なのは、仕事の目的とゴールを明確にし、自分で行う作業とAIに任せる作業を分ける力です。

たとえば会議資料を作成する場合、過去資料の要約や構成案の作成はAIに任せやすい一方、会議で何を決めたいのか、そのために参加者へどの情報を伝えるべきかといった判断は人が担います。

すべてをAIへ任せるのではなく、仕事を分解し、人の判断が必要な部分や、自分が経験すべき部分を見極めることが重要です。

目的や条件を具体的に伝える

AIへ「資料を作ってください」とだけ依頼しても、目的に合った成果物が得られるとは限りません。仕事の目的、読み手、使用する情報、含めてほしい内容、制約などを具体的に伝える必要があります。

これは、詳しいプロンプトを書くためだけの技術ではありません。自分の考えを整理し、相手に分かるように仕事を伝える力です。

AIへの依頼を通じて仕事の目的や条件を言語化する経験は、上司への相談や他部署への依頼、後輩への仕事の引き継ぎにも役立ちます。

AIの出力を見極める

AIが作成した文章が自然に見えても、内容が正しいとは限りません。事実関係や目的との整合性、自社・顧客の状況への適合性、抜けている視点などを確認する必要があります。

経験の浅い若手社員が、AIの誤りをすべて一人で見抜くことは困難です。自分だけで判断できない場合には、上司や先輩、専門部署へ確認することも重要です。

AIの回答を鵜呑みにせず、根拠を確かめ、必要に応じて周囲へ相談する力を育てます。

最終判断と成果物に責任を持つ

AIが複数の案を示しても、どの案を採用するかは人が決めなければなりません。若手社員には、採用した提案と採用しなかった提案、その判断理由を自分の言葉で説明する力が求められます。

「AIが回答したから」で終わらせず、AIの出力に何を追加・修正し、最終的に自分が何を決めたのかを明確にすることが大切です。

AIに仕事を任せ、出力を見極め、自ら判断する経験は、若手社員が将来、人やチームを動かすための基礎にもなります。生成AIの操作方法だけでなく、AIを含めて仕事を設計し、成果に責任を持つ力を育てることが重要です。

AIとの協働に必要な能力を整理した「AI Fluency Framework」でも、AIに任せる範囲を決める「委任」、目的や条件を伝える「記述」、出力を見極める「評価」、AIの利用結果に責任を持つ「責任」という4つの能力が示されています。

参考:AI Fluency Framework

AIに任せる仕事と若手に経験させる仕事の分け方

生成AI時代の仕事の任せ方を考える際は、「AIにできるか、できないか」だけで判断しないことが重要です。

AIで効率化できる仕事であっても、その仕事に若手社員へ経験させたい学びが含まれている場合があります。反対に、若手が担当してきた仕事でも、学習効果が少なく、時間だけがかかっているのであれば、積極的にAIへ任せてよいでしょう。

仕事を分ける際は、次の4つに整理すると考えやすくなります。

分類仕事の例若手社員が担う役割
AIに任せやすい仕事要約、情報の分類、文章の下書き出力内容を確認し、不足する情報を補う
AIと若手社員が協働する仕事企画案の比較、仮説立案、提案資料の作成編集、検証、判断を行う
若手社員に経験させたい仕事顧客へのヒアリング、現場観察、他部署との調整対話、観察、意思決定を担う
上司・専門家の確認が必要な仕事法令、処遇、重要な経営判断必要な情報を整理し、適切な相手へ相談する

AIに任せやすい仕事

情報の分類や文章の下書き、資料の要約など、一定のルールや形式に沿って進められる仕事は、AIに任せやすい領域です。ただし、若手社員が一切関わらないのではなく、出力を確認し、不足する情報や自社固有の文脈を補う役割を持たせます。

AIと若手社員が協働する仕事

企画案の比較や仮説立案などは、AIに下準備を任せ、若手社員が検討、編集、判断する形が考えられます。AIに正解を出してもらうのではなく、若手社員が考えるための材料を増やす目的で活用します。

若手社員に経験させたい仕事

顧客や現場へのヒアリング、他部署との調整などは、人との関係や実際の状況の中で学ぶ仕事です。AIが一般的な情報を提示できても、本人が経験しなければ身につきにくいため、意図的に任せる必要があります。

上司や専門家の確認が必要な仕事

法令や社内制度、採用・評価・処遇など、誤りが起きた場合の影響が大きい仕事は、上司や担当部署、専門家が確認します。若手社員には、必要な情報を整理し、自分では判断できない事項を適切な相手へ相談する経験を積ませます。

仕事の分担に迷ったときは、次の3点を確認するとよいでしょう。

  1. その仕事を通じて、若手社員に何を学ばせたいか
  2. 誤りが起きた場合、顧客や社員、事業へどの程度の影響があるか
  3. 最終的な判断と説明の責任を誰が持つか

「処理時間を短縮できるか」に加えて、「どのような経験を若手へ残すか」を考えることが、生成AI時代の仕事の任せ方では重要です。

若手の成長を止めない「AIを活用したOJT」とは

生成AI時代のOJTでは、AIを使わせないのではなく、AIを積極的に使いながら、若手社員が考え、検証し、判断する機会をつくります。

従来の仕事をそのまま人に残すのではなく、AIを活用して作業時間を短縮しながら、判断や現場経験の密度を高めるOJTのポイントをご紹介します。

AIの成果物を検証・編集してもらう

AIが作成した成果物を若手社員へ渡し、次の点を確認してもらいます。

  • 事実と異なる内容はないか
  • 必要な情報が抜けていないか
  • 自社や顧客の状況に合っているか
  • 読み手が誤解する表現はないか
  • 判断に必要な背景が含まれているか
  • リスクや反対意見が抜けていないか

たとえば、AIに会議の議事録を作らせた後、若手社員に「要約から漏れた発言はないか」「意見が分かれた理由は何か」「この議事録だけを読んだ人が誤解する可能性はないか」を考えてもらいます。

単に誤字脱字を直すのではなく、AIの成果物へ自社固有の文脈や人間の判断を加える仕事として設計します。

AIの回答とは異なる「別解」を考えてもらう

AIが出した回答を唯一の正解とせず、若手社員に別の可能性を考えてもらいます。

  • 別の前提に立つと、どのような案になるか
  • 顧客の立場から見ると、何が気になるか
  • 現場の制約を加えると、実行可能か
  • 短期と中長期では、判断が変わるか
  • AIが挙げていない選択肢はないか

これは、AIの回答を否定するための訓練ではありません。AIの回答を一つの有力な選択肢として受け止めながら、考えの幅を広げる訓練です。

AIで立てた仮説を現場で検証する

AIは、既存の情報を整理し、仮説を立てる際に役立ちます。しかし、自社の職場や特定の顧客について、公開情報や入力情報に含まれていない事情まで正確に把握できるわけではありません。

そこで、AIで仮説を立てた後に、若手社員が現場で確認する流れをOJTに組み込みます。

  1. AIを使って情報を整理する
  2. 顧客や現場に関する仮説を立てる
  3. 顧客へのヒアリングや現場訪問を行う
  4. AIの仮説と実態の違いを整理する
  5. 企画や提案内容を修正する
  6. 上司からフィードバックを受ける

AIで時間を短縮した分、顧客との対話や現場観察に時間を使うことで、効率化と経験の獲得を両立できます。

AIを使って安全に失敗できる場をつくる

生成AIは、若手社員が繰り返し練習するための相手としても活用できます。

  • AIを顧客役にした商談練習
  • 難しい質問への回答練習
  • クレーム対応のロールプレイ
  • 面談やフィードバックの練習
  • 過去の失敗事例を使ったケーススタディ
  • 誤りを含むAIの資料を見抜く演習

実際の顧客対応で失敗する前に、仮想的な状況で何度も試行錯誤できます。

ただし、AIによる評価をそのまま客観的な評価と見なすのは適切ではありません。AIのフィードバックは振り返りの材料とし、指導者が内容を確認したうえで助言します。

ベテラン社員の暗黙知を若手が整理する

若手社員がベテラン社員へインタビューし、判断基準や過去の失敗を言語化する取り組みも考えられます。

  • どの情報を見て判断しているか
  • どのような場面で失敗しやすいか
  • 顧客によって対応を変える基準は何か
  • 過去のトラブルから何を学んだか
  • AIに任せられる仕事は何か
  • 人が引き続き担当すべき仕事は何か

インタビュー内容の整理や分類にはAIを使えます。そのうえで、若手社員自身が「この判断基準を今後の業務でどう活用するか」「AIを前提に仕事をどう変えられるか」を考えます。

若手社員がAIの活用方法をベテラン社員へ伝え、ベテラン社員が業界や顧客、仕事の勘所を若手へ伝える双方向の学びにもつなげられます。

管理職・OJT担当者は判断過程を確認する

生成AIを使った成果物だけを見ても、若手社員本人がどこまで理解しているかは分かりません。

管理職やOJT担当者は、次のような質問を通じて、若手社員の判断過程を確認します。

  • この仕事の目的をどのように捉えましたか
  • 何を自分で行い、何をAIに任せましたか
  • なぜその部分をAIに任せたのですか
  • AIへどのような背景や条件を伝えましたか
  • AIの提案のうち、何を採用しましたか
  • 採用しなかった提案はありますか
  • AIの回答には、どのような視点が不足していましたか
  • どのようなリスクを確認しましたか
  • 最終的に自分で判断したことは何ですか
  • 同じ仕事を行う場合、次は何を変えますか

若手社員と上司の判断が異なる場合も、すぐに正解を教えるのではなく、なぜその判断に至ったのかを確認します。

本人がAIへ出した指示、AIから得た回答、最終成果物の違いを比較すれば、どこで判断を誤ったか、どこに不足があったかを具体的にフィードバックできます。

生成AI時代の人材育成に向けて人事が取り組むこと

生成AI時代の若手育成を、管理職やOJT担当者個人の工夫だけに任せると、部署や指導者によって育成方法に差が生まれる可能性があります。

人事部門には、生成AIの利用に関する方針を示すだけでなく、どのような人材を育てたいのか、若手社員にどのような経験を積ませるのか、そのために管理職やOJT担当者をどう支援するのかを整理する役割があります。

ここでは、生成AI時代の人材育成に向けて、人事が取り組みたいことを4つ紹介します。

1. 求める人材像と育成目標を定める

まず、人事は「生成AIを使える人」という曖昧な人材像を、具体的な行動へ落とし込む必要があります。

前述したように、生成AIと協働するためには、次の4つの能力が重要です。

  • AIに任せる仕事を決める
  • 目的や条件を具体的に伝える
  • AIの出力を見極める
  • 最終判断と成果物に責任を持つ

ただし、新入社員と管理職に同じ水準を求める必要はありません。若手社員には、上司の確認を受けながらAIの出力を検証し、自分の判断を説明できることを目標とします。中堅社員には、自分の担当業務を分解し、AIとの役割分担を自律的に決めることが求められるでしょう。

管理職には、自らAIを活用するだけでなく、部下がどのようにAIを使い、何を判断したのかを確認し、適切なフィードバックを行う役割もあります。

年次や役割ごとに求める水準を定めることで、任せる仕事や必要に応じた育成施策を設計しやすくなります。

2. AIと人の役割分担を業務ごとに整理する

生成AIの利用範囲を社員個人の判断だけに任せると、同じ社内でも使い方に大きな差が生まれます。AIに任せてよい仕事まで人が行っていたり、反対に、人が確認すべき仕事をAIへ任せていたりすることも考えられます。

そこで人事は、現場部門や情報システム部門などと連携し、職種や業務ごとの役割分担を整理します。

たとえば、次のように分類します。

  • AIの利用を推奨する仕事
  • AIと人が協働して進める仕事
  • 若手社員に意図的に経験させる仕事
  • 上司や専門家の確認が必要な仕事
  • AIを利用してはいけない仕事
  • 人が最終判断を行う仕事

このとき、「AIで処理できるか」だけで判断しないことが重要です。その仕事が、これまで若手社員にどのような知識や経験を与えてきたかも確認します。

AIへの移行によって失われる学習機会がある場合は、顧客へのヒアリング、現場での検証、ケーススタディなど、別の形で経験できるようにします。業務効率化と人材育成を別々に進めるのではなく、AIで削減した作業時間をどのような成長機会へ振り向けるかまで考えることが大切です。

3. 管理職とOJT担当者への支援を見直す

生成AIを使うと、若手社員でも短時間で一定水準の成果物を作りやすくなります。一方、完成した成果物だけを見ても、本人が仕事の目的をどこまで理解し、何を自分で判断したのかが分かりにくくなる可能性があります。

そのため、OJTでは成果物を確認するだけでなく、若手社員が何をAIに任せ、出力をどのように見極め、最終的な判断を行ったのかも振り返ることが重要です。

人事は、前述した判断過程を確認するための質問例や振り返り項目を、OJTガイドラインやシートなどに反映します。また、管理職やOJT担当者が、目的やリスク、若手社員の習熟度に応じて仕事を任せられるよう、考え方や実践例を共有します。

管理職によって「AIの使用を認める」「AIをできるだけ使わせない」といった対応が異なると、若手社員が経験できる仕事にも差が生まれます。AIの利用を一律に認めたり制限したりするのではなく、業務の目的やリスク、若手社員に身につけてほしい能力を踏まえて、仕事の任せ方を考えることが大切です。

4. 成功・失敗事例を組織の知識として蓄積する

生成AIをうまく活用している社員がいても、その方法が本人の中だけにとどまれば、組織全体の成長にはつながりません。

一方で、使用したプロンプトだけを共有しても、別の社員が同じ成果を得られるとは限りません。業務の目的や前提条件が異なれば、必要な指示や判断も変わるためです。

事例を共有する際は、次の内容を整理します。

  • どのような課題を解決しようとしたか
  • 何をAIへ任せ、何を人が担当したか
  • どのような判断基準で出力を確認したか
  • AIの提案をどのように修正したか
  • 最終的にどのような成果が得られたか
  • どのような失敗や手戻りがあったか
  • 次回は何を改善するか

成功事例だけでなく、AIの誤りを見抜けなかった事例や、期待した成果を得られなかった事例も共有します。失敗の背景を整理することで、AIが誤りやすい場面や、人による確認が必要なポイントを組織全体で学べます。

こうした事例を、テンプレートやチェックリスト、業務手順などへ落とし込めば、個人の経験を組織共通の知識として活用できます。

生成AIの機能や利用方法は今後も変化していきます。人事は一度方針や仕組みを整備して終わりにせず、現場で得られた成功・失敗事例をもとに、仕事の分担やOJTのあり方を継続的に見直していくことが求められます。

生成AIを若手の成長を支える「メンバー」にしよう

生成AI時代の若手育成では、従来の仕事をそのまま残すのではなく、AIに任せる仕事と若手社員に経験させる仕事を見直す必要があります。

若手社員がAIへ仕事を依頼し、出力を見極め、自ら最終判断する経験を設計することで、生成AIは成長機会を奪う存在ではなく、成長を支える「メンバー」になります。人事と管理職が連携し、仕事の任せ方やOJT、フィードバックのあり方を見直していきましょう。

エンでご支援できること

生成AI時代の人材育成では、AIの操作方法を学ぶだけでなく、仕事の目的を考え、情報や提案を見極め、自ら判断する力を育てることが重要です。

また、若手社員の判断過程を引き出し、適切なフィードバックを行う管理職やOJT担当者の育成も欠かせません。

エンでは、若手社員の主体性や課題解決力の向上、管理職の部下育成、目標管理、フィードバック力の強化に向けた法人向け研修をご提供しています。

若手社員の育成が現場任せになっている、OJT担当者によって指導の質に差がある、生成AIの普及を踏まえて若手育成や管理職育成を見直したいとお考えの方は、ぜひサービスの詳細をご覧ください。

参考文献・参考資料

  1. 三菱総合研究所「AI時代こそ『経験』『判断』重視の若手育成を」
    https://www.mri.co.jp/knowledge/opinion/2026/202607_3.html
  2. 森正弥「『AI時代、若手の育成はどうしたらいいんでしょう?』ー どの業界の方からも立て続けに頂いたこの問題を考えてみる」
    https://note.com/masayamori/n/n13276d5432e0
  3. Hao-Ping (Hank) Leeほか Microsoft Research, “The Impact of Generative AI on Critical Thinking”
    https://www.microsoft.com/en-us/research/publication/the-impact-of-generative-ai-on-critical-thinking-self-reported-reductions-in-cognitive-effort-and-confidence-effects-from-a-survey-of-knowledge-workers/
  4. 上記研究の論文PDF
    https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2025/01/lee_2025_ai_critical_thinking_survey.pdf
  5. Rick Dakan、Joseph Feller「AI Fluency Framework」
    https://aifluencyframework.org/
  6. 「The AI Fluency Framework」概要資料
    https://www-cdn.anthropic.com/b383cf6baddbfc72fdf8b0ed533a518e2872d531.pdf

この記事を書いた人

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